設備メーカーの不具合対応の慢心
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2022年10月5日付第481号「論談」より
◆NPO日住協が考えるQCDSE
メーカーの生産活動の基本がQCDSEで、Quarity(品質)、Cost(価格)、Delivery( 安全)、Environment(環境)である。
最優先すべきは品質であり、次にコストと納期。これらは約束であり、だからこそ当該メーカーの、その製品を選ぶ。NPO日住協は、SにService(誠心誠意の対応)を、EにEthical(倫理)を加えたい。
特に後者は、すべてのステークホルダーに求められる物事の土台である。
◆玄関ドアやサッシの不具合
マンションの経年に伴い、玄関ドアやサッシの改修工事などが増えた。それらは居住者が毎日開閉するので機能性と堅牢性などが求められる。
玄関ドアは外と内とを仕切り、防火扉としての機能も有し、外観の色やデザインも重視される。
入居20年ほどで玄関ドアの「上部蝶番(ちょうつがい)傍の扉体(ひたい)が蝶番ごと破壊」し、さらに「表面板の剥離」などで困っているマンションがある。
別のマンションでは、サッシを「カバー工法により改修したが下端(したば)ゴムが剥がれた」という。メーカーの対応は大半の課題で遅々として進んでいないという。
◆不具合の原因解明がメーカーの責任
住宅設備メーカーが統合して大会社になったが、管理組合との距離が離れ対応が鈍くなった。
アフターフォローが大事だが、不具合を認めようとしない。苦情は品質の異常を伝えているに過ぎず、設計や品質管理などに問題がある可能性を示している。
メーカーは原因を解明し、その経緯を明示し必要な交換等をすぐに実施すべきである。そうしてこそ管理組合をはじめ多くのユーザーの理解が得られる。
しかもそれらによって改良・改善や新たな製品開発につながる。製品の利用者である消費者の困っている状況を真摯に受け止めることで、企業の評価と価値は見違えるほどよくなる。そのチャンスを逃し、企業価値を低下させている。
◆管理組合の声に耳を傾けよう
「逃げない」「隠さない」「嘘をつかない」の対応三原則を忘れてはならない。
自己保身を優先し、管理組合をクレーマーと決めつけているとしか思えない例もある。メーカーは慢心を横に置き、品質体制を見直し、ユーザーの困っている状況に耳を傾けたい。
それによって、自社の製造や対応の品質が向上するという善循環をもたらす。
メーカーは信頼を取り戻すためにEthical(倫理)に対する社内教育を徹底し、同時に管理組合とのWin-winづくりへの取り組みを強く求めたい。(NPO日住協論説委員会)
(大規模修繕工事新聞 154号)