建築基準法における旧耐震基準の建築物(昭和56年5月31日以前に建築確認を受けたもの)は、全国で約104万戸。耐震改修促進法の基本方針(令和3年改正)は「令和12年までに耐震性が不十分な住宅、令和7年までに耐震性が不十分な耐震診断義務付け対象建築物をおおむね解消する」ことを目標として掲げ、国土交通省は所有者による耐震化を支援しています。
令和4年3月31日時点での耐震診断義務付け対象建築物の耐震化率は、71.3%(国土交通省推計)。「おおむね解消する」ためにも国土交通省では、まずは耐震診断を実施し、耐震性が不十分であった場合は、耐震改修や建替えを検討するよう促しています。
東京ではマンションの耐震診断、耐震改修等に関する助成事業を行う都内の区市町村に対し、補助を実施しています。
東京都マンションポータルサイトで耐震改修工事の事例を公表しているため、このサイトから一部閲覧することができます(下表参照)。
助成の内容や金額についてはマンションが立地する区市によって異なるため、各区市に問い合わせてください。
また、耐震改修促進法では、所管行政庁に対して区分所有建築物の耐震改修を行う必要のある旨の申請をする
ことができるとされています。
そして、その旨の認定を受けると(要耐震改修認定建築物)、耐震改修を普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)で行うことができるようになり、合意形成が取りやすくなります。
マンションでは耐震補強か建替えかを議論するケースが多くみられますが、建替えまでにかかる期間に大地震が生じた場合、建物の崩壊によって大切な命を落とすことも考えられます。
建物の長寿命化を目指す上でも、建物の耐震化は重要なテーマの一つといえるでしょう。
耐震改修は多額の費用がかかったり、特定の住戸のみに負担がかかることがあるため、合意形成が困難な場合があります。建物全体の耐震改修がすぐに困難なときは、
段階的に改修を進めることで、少しでも耐震性の改善を図ることも考えられます。
大規模修繕工事新聞2023-02-158号
鉄骨ブレース(筋交い)補強
柱と一体化した袖壁による補強
炭素繊維巻き補強。柱の靭性(ねばり)を向上させる