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第61回管理組合オンラインセミナー採録/「管理会社変更の実態と実務~これからの管理会社との新しい付き合い方~」<後編>

一般社団法人全国建物調査診断センターが2カ月ごとに主催している恒例管理組合オンラインセミナーの一部を紙上採録します。今回は12月18日にYou Tubeで公開した第61回セミナー「管理会社変更の実態と実務~これからの管理会社との新しい付き合い方~」の後編です。
 なお、これまでのセミナーはYou Tubeにより動画配信を行っています。全建情報図書館でもセミナーの内容等を収録した書籍を発行しています。全建センターのホームページから検索してください。

講師:水島 一/全建センター理事 ・マンション管理士 ・管理業務主任者 ・宅地建物取引士 ・マンション維持修繕技術者 ・認定ファシリティマネジャー

管理会社候補が決まってからやること

  管理会社を選ぶのに1社ということはありませんので、最低でも3社くらいは候補を決めます。
 次に実務です。
 まずは管理委託契約書を準備してください。管理委託契約書には、自分たちのマンションの「仕様」が書かれています。
 例えば、管理員は何曜日に出て、何時から何時までやっているとか、定期清掃は年何回やっているのか、ポンプ点検は何回やっているのか、さまざまな自分たちのマンションの管理業務のエッセンスは管理委託契約書にありますので、この契約書の把握が出発点となります。
 契約書にある管理業務の仕様の確認をして、現在と同じ仕様でお願いするのか、または管理委託費の削減であれば、管理員の時間を短くしてみよう、掃除の回数を減らしてみよう、そうした一部仕様を変更してお願いするのか、そうしたことを理事会で協議する必要があります。
 なぜ管理業務の仕様がそんなに大事なのでしょうか。
 候補にあげた複数の管理会社に対し、実際に見積をお願いしますが、これはいわゆるコンペ、入札です。入札において一番大切なのは仕様の確定なんです。
 管理組合、理事会で決めた同じ仕様・条件で、各社公平に提案をお願いすれば、みなさん仕事がほしいですから、勝手に業務回数を減らして金額を落としてきたりすることも考えられます。
 金額だけでの評価にならないように、きちんと管理仕様の確定を行って、自分たちマンションの目指すべき目標を決めて、管理会社に見積をお願いするようにしてください。元々の目標が達成できなくなる可能性があります。

管理会社候補に見積もりを依頼する

 候補先の管理会社に理事会で決定した管理業務の仕様を伝えます。
 一般的には、仕様書の金額部分を消して、各社に同じ条件として仕様を提出するケースが一般的です。金額が見えると、その金額よりも下回って出したりだとか、逆にこの金額であれば利益がとれるというケースもありますので、必ず金額は伏せてください。
 実際には、現地調査も必要になるので、理事会で協力して、各社の現地調査の対応を行います。
 新しい管理会社に変更するということは、当然、現在の管理会社の協力は得られませんので、理事会のメンバーで協力しながら行うことになります。

現地調査・見積提出時の注意事項

 各社公平に同じ時間を設定してください。 一般的にはマンションの規模によりますが、各社1時間程度です。30分くらいで現地の確認、20分くらいで書類の確認と質疑応答です。マンションが大きくて、見る設備が増えれば、時間も増えてきますので、そこは管理組合のほうで調整をしてください。
 そして、必ず理事が各社の調査に立ち会います。もちろん管理会社も緊張感を持ってやってくると思いますけれど、実際に管理組合の人がみていれば、モチベーションも上がります。
 各種設備点検、消防設備点検などは現地を見るだけでなく、点検報告書の確認も必要となるので、あらかじめ書類の準備をしておきます。事前にデータで提供できるのであれば、データを管理会社に渡すことで時間の短縮ができます。
 現地調査を実施し、候補先の管理会社からの質疑等も経て、だいたい1週間から10日程度が一般的ですが、期日を定め、見積書を提出してもらいます。あて先は理事長宅、管理事務所など、封をして提出してもらいます。基本的には郵送のみとするのが確実かなと思います。
 開封については、複数の理事が立ち会って、行うようにしてください。これは入札に近いものになりますので、公平な形で対応してください。

プレゼンテーションを依頼する
 プレゼンテーションで大事なのは、理事会だけではなく、全組合員が参加できるようにすることです。理事会を中心に進めることが正しいものの、実際に住んでいる理事会以外の組合員が、今何が起きているのか、なかなかわからないケースがあります。
 そのために全組合員に参加を促してください。事前の情報をみなさんがキャッチした上で、プレゼンテーションに臨むようにしていただければよいかなと思います。
 タイムスケジュールは、私の経験上、1社45分程度です。説明20分、質疑応答20分、会社の入れ替え5分。45分単位で回していければいいのかなと思います。
 またプレゼンテーションでは、実際のフロント担当予定者(可能であれば、上席者も)の出席も必ず要請をしてください。
 実務の話はフロント担当者から生の話を聞きたいでしょうし、営業の人間の説明より管理組合の理解が深まるのではないかと思います。

新旧管理会社間での引き継ぎ
 総会決議や重要事項説明会が済むと、新旧管理会社間での引き継ぎが行われます。管理組合の所有物の引き継ぎは、基本的には総会から1カ月~2カ月で、理事の立ち会いが求められます。旧管理会社の管理最終日、そして新しい会社の管理開始日はできる限り理事も現場の立ち会いをしてください。
 管理会社の変更をすると管理費等の引き落としの方法が変わります。一番大変なのは、管理費等の口座振替依頼書の再取得です。
 組合員みなさんの協力をいただくよう理事会のほうで広報をしっかりお願いします。
 新しい管理会社体制のスタートです。管理員、清掃員など現場スタッフが変更しますので、管理組合と管理会社でサポートをし合って、いくことが大切です。現場の変更はある程度できますが、一般的に、事務関係の引継が完了するまでは3カ月程度はかかります。
    新管理会社の業務チェック
 3カ月を経過すると引き継ぎも一段落しますので、そろそろ業務内容のチェックや当初設定した目標に向けての取組みを開始していく時期です。
 まずは管理委託契約書です。契約に基づいた仕様で業務が行われているかの確認を行ってください。そして、営業時やプレゼンテーションの際、話に上がったことがきちんと実施されているか、その確認もそろそろするタイミングになってきます。
 しっかりとチェックをして、ちょっと抜けているところがあれば、改善を図る点が出てくるかもしれません。
 しっかりと連携を取って軌道に乗せていきましょう!

まとめ
 管理会社変更が始まったきっかけは自由競争がきっかけといわれています。そして、管理会社変更には明確な目標設定が必要です。
 場合によっては、専門的な知識が必要です。そうした場合にはパートナーの選択も必要です。
 管理会社変更はあくまで目的ではなく手段ですので、目的意識のない管理会社変更は、意味がありません。常に基本に戻りながら、行動することが大切だということを理解していただきたいと思います。
 これからの管理会社の付き合い方ですが、マンション管理会社は労働集約産業であるので、人材不足の影響をもろに受けています。そして、人材獲得の困難、人件費の高騰、社員の高齢化など、問題が山積している状況です。
 管理組合としても上記を理解していただき、過度な値下げやサービス提供の要求は避けていただきたいと思います。とはいえ、管理委託契約書の内容をきちんと履行することは当たり前のことです。
 そうしたことを踏まえた上で、管理会社との付き合いを考えていただきたいと思います。
 今後、大手管理会社では、特に小規模マンション等については、今後管理委託契約更新を行わないケースが出てくるかもしれません。ひとえに採算性の問題です。あまりに手が掛かってしまうマンションについても同様のことが起きるかもしれません。
 管理組合側も管理会社とのやりとり、最新の注意を払っていく必要があると思います。理事会の理事長、役員のみなさんには常に社会情勢についてアンテナを張っていただき、管理組合の目標を理解できる管理会社とともに管理組合運営を行ってほしいと思います。

大規模修繕工事新聞 23-02-158号