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東京・豊島区のマンション施策の概要

国土交通省が2022年10月16日に開催した「マンション管理適正化シンポジウム」より、マンション管理の適正化に向け先駆的な取り組みを行っている地方公共団体の中から東京・豊島区の施策を紹介します。

まず、豊島区マンション管理推進条例の特徴として、管理状況届出の義務化、区の指導・勧告などに従わない場合はマンション名を公表する罰則規定、の2点があります。ただし、マンション名の公表をしたことはまだありません。
 管理状況届出制度は本条例の実効性を担保することが目的です。この届出書を作成してもらうことで、管理組合がマンションの管理状況を再認識してもらうきっかけになると考えています。
 この管理状況の届出を促進するために、「マンション管理支援チーム派遣事業」を行っています。このチーム派遣事業は、区職員とマンション管理士などが2人1組になって、主に未届出マンションを訪問し、マンションの管理状況や困っていることなどを伺い、次の支援につなげたり、さらには管理状況届出書をその場で記入していただくなどして、届出を促進しております。
 支援制度としては、マンション専門家派遣事業があります。
 この事業は、マンションの大規模修繕工事や長期修繕計画作成など、専門的な知識が必要となる際に、管理組合から要望があるとマンション管理士等を無料で派遣し、課題の優先順位や考え方などをアドバイスしたり、計画修繕そのものの理解を深めてもらうものです。
 豊島区内分譲マンションの管理状況届出制度の届出状況です。
 区内には約1,200棟のマンションがありますが、令和3年度で78.8%の届出をしていただいています。
 令和元年から折れ線が上がっているのは、未届出マンションを対象にチーム派遣を行ったことによります。チーム派遣による未届出マンションへの声かけがいかに有効かがわかるかと思います。
 残り2割の未届出マンションに対しても、引き続きチーム派遣を行って届出を促していこうと思っています。
 届出のあったマンションの管理状況を示したグラフです。
 長期修繕計画や修繕の計画的な実施をしていないマンションの割合はいずれも20%強であることから、これらのマンションに対して、チーム派遣や専門家派遣の支援をしていきたいと考えております。

 今後の展望について説明します。
 1つ目は、われわれ豊島区が区内のマンションの管理状況を把握することが支援に結びつくと考えていることから、まずは管理状況の届出を促すことで適正な維持管理を促進していきます。
 2つ目は、管理組合活動の停滞や高齢化による人材不足、長期修繕計画が未作成のままであると今後、急速にマンションの老朽化が進んでいきます。
 そのため、長期修繕計画などの未作成マンションに対しては、専門家派遣などを通じて重要性を理解いただきながら、計画を立ててもらうことで、自主的に維持管理の促進を図っていきます。
 さらに令和4年度内に策定予定のマンション管理計画認定制度に申請してもらうことで、マンション管理水準の底上げを図り、区内の全マンションの管理不全の予防につなげていこうと考えています。

大規模修繕工事新聞2023-02-158号