「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

機械式駐車場の維持管理を考える

マンションの機械式駐車場はいくつかの深刻な課題を抱えている。一つは重大事故の多発であり、もう一つは維持管理費用の不足と必要な補修対応の遅れである。それに合わせて最近は空き区画の増大問題が広がっている。
 これらの三つの課題は相互に絡み合って解決をいっそう困難にしている。
◇多発する重大事故
 マンションに限った事故の統計はなく、機械式駐車場全体であるが、2007年以降少なくとも32件の重大人身事故が報告されており、うち死亡事故は12件である。
 事故件数の40%が共同住宅なのでマンションの割合が相当部分を占め、おそらくマンションでもっとも事故の危険性が高いのは機械式駐車場であると思われる。
 また、2021年3月までの5年間で、パレット落下事故が15件発生している。
 これらの事故では、部品交換の必要性が事前に指摘されていたにもかかわらず、交換を見送っていたケースが多数にのぼる。
 欠陥や老朽化が原因で事故が発生した場合、管理組合の責任であることは明らかであり、重大事故が発生してからでは遅い。
◇修繕計画の欠如も
 修理の見送りや遅延の原因に、機械式駐車場の維持管理費用の不足がある。
 考えられないことだが、長期修繕計画に機械式駐車場の補修や取り替えの計画が計上されていない管理組合がある。
 さらに、公平と受益者負担の原則から費用に見合う駐車場料金を必要とするのにもかかわらず、駐車場料金が無料あるいは過少で、日常の維持費や点検・修理費用も別の財源から手当てせざるを得ないところさえある。
◇空き区画の増加
 これに加えて、当初はむしろ駐車場不足であったものが、高齢居住者の増加などによって、駐車場の空き区画の増加傾向も広がっており、機械式を廃止して平面化したり、台数の縮減を行ったところもある。
 条例による設置率の基準もあり、費用の点も大変だが、検討の必要がある。設置率は都条例では「保有率が低いなどのところは緩和することができる」との規定もあり、交渉により低減の可能性はある。
◇対策と合意形成
 機械式駐車場の管理運営にあたっては、何といっても利用者や居住者の安全第一が求められるのはいうまでもない。
 それを前提とするとともに、安全を保障する上でも、負担の適正化の上でも、資金不足の対策や長期修繕計画への計上は必須である。 また、問題点の多い機械式駐車場は将来的には廃止ないし縮減が望ましいと考えられ、そのことも含めて個々の管理組合での実情を明確にし、組合員に直面している問題点を率直に示し、適正な解決策を検討して、組合員間の合意形成を図る努力をお願いしたい。
(NPO日住協論説委員会)

大規模修繕工事新聞2023-02-158号