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トータル・マネジメント方式(TM方式) 「定期的な検査」「長計見直しサービス」で18年周期を提案/全建センター

  大規模修繕工事は12年周期から18年周期へ―これまで一般的にいわれてきた12年周期ですが、技術の向上や材料の高品質化によって、今や15 ~ 18年周期になると言われるようになりました。
 とはいえ、修繕周期の延長とは、放っておいても経年劣化の進行が遅くなるという意味ではありません。建物の維持管理は常に計画修繕の元で行われることには変わりないのです。
 マンションは戸建てと異なり、建物の大きさから地域への配慮から管理する必要があります。
 では、18年周期はどのようにデザインすればよいのでしょうか。
 全国建物調査診断センターでは、定期的な建物診断、「5年毎の長期修繕計画の見直しサービス」、大規模修繕工事を分散して必要なものだけ適時行う「中規模修繕・分散方式」を組み込んだトータル・マネジメント方式(TM方式)によって、18年周期を提案しています。

■長期修繕計画の見直し
 「5年毎の長期修繕計画見直しサービス」は、現在の長期修繕計画を第三者的にチェックし、管理組合の実情にそった新計画をもとに大規模修繕工事を18年周期とします。1件20万円(税込み)、100戸以上は応相談。
■定期的な検査+小修繕
 修繕工事の分散化や足場のかかる工事の長周期化は定期的な検査により、適切な維持管理を行ってこそ成立します。適切な検査を行い、継続的な小修繕を繰り返すことで強引な工事計画にも対抗できるのです。
 小修繕は「小回り」と「コスト」が重要ですので、専門工事会社に直接発注することをおすすめしています。全建センターの会員工事会社紹介制度がありますので、ご活用ください。
■中規模修繕・分散方式
 「中規模修繕・分散方式」とは、大規模修繕工事の項目を分散し、必要なものだけ適時適切に実施しようとするものです。
 現在の計画では、おカネが貯まるスピードと工事をやらなければいけない時期がアンバランスになり、一時金や借り入れを必要とするケースが少なくありません。
 さらに大規模修繕工事の後すぐに給排水設備工事や、電気設備、エレベーター、玄関ドア・サッシの大きな工事が待ち構えているケースもあります。
 この問題を改善するため、各種工事を集約させて単年度に大きな工事を実施するのではなく、大規模修繕工事を範囲ごとに分散させて大きなお金を投入することを避ける方式を考案しました。この方式を採用することにより、管理組合の財政改善が可能となります。
■直接施工・管理方式
 管理組合が工事会社と工事請負契約を締結するにあたって、全建センターが管理組合と管理契約を結びます。全建センターの管理業務は、①責任施工会社の選定アドバイス②工事のマスタースケジュール作成③工事会社管理④予算管理です。
 これまでの設計・監理方式と比べ管理料のみのためコスト削減となり、その他にも工事会社保証・完成保証・瑕疵保証・材料品質保証がセットされています。
■9年目点検
 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)では、10年間の瑕疵担保責任(契約不適合責任)を定めています。これは引き渡された住宅に施工不良や不具合等の契約不適合(瑕疵)があった場合、その修理をしたり、賠償金の支払いなどをしなければならないことを意味しています。
 そして、この期間が10年間であるため、築10年目以内に点検を実施し、不具合を確かめることが賢明です。「9年目点検」としましたが、「築10年目以内」が分譲主の負担で修理をしてもらえる法的ラインです。
■建物調査診断書・評価サービス
管理会社・コンサルタント・工事会社等からの建物調査診断書に問題があるケースが増えており、全建センターへの相談ケースが増えています。
 大規模修繕工事における第一歩である「建物調査診断書」の内容が、本当に適切であるか全建センターが評価・判定します。
常設委員会の必要性
 大規模修繕工事を18年周期でやろうとすれば、常設委員会による継続性のある検討、点である大規模修繕工事を線でつないでカバーしていく、途切れ目のない修繕の検討が必要です。
 1回修繕したことを2回目に生かせ、3回目は1回目と2回目を踏まえた上で実施する。そして工事と工事の間も常に委員会が目を光らせ、大規模修繕工事を点ごとのイベントにしない、
このような環境の組織が必要です。


管理組合にとって本当に必要な長期修繕計画とは
 大規模修繕工事はいきなり取りかかるのではなく、その前には必ず建物の調査診断をやります。これを含めて計画に盛り込むことも必要です。
 大規模修繕工事の2、3年前に実施する調査診断によって、工事の適時性を見極めます。この結果により、工事の具体的時期を前倒しする、あるいは後ろ送りにするなどの修正を行います。
 本当に必要なのは、根拠のある修繕工事時期が設定できる長期修繕計画です。持つべき意識は、技術的根拠を実施時期としようというものです。やらなくてもいいのに、「どうせやるならまとめてやってしまおう」という考え方自体、修繕積立金の無駄使いだという意識を持つことが必要です。
価値のある住まいづくりのために
 適切な維持管理のためには、この2つの目線(中長期目線、短期目線)と、3つの項目(①日常修繕、②メンテナンス、③事故・不意の損傷)の工事をミックスしながら組み立てていくことが管理組合としてはたいへん重要なものになると思います。
 こうしたことを経ることで18年周期の工事により付加価値が付けられ、工事の意義も上がり、住まいの居住価値も上がることにつながります。
 単なるハードの修繕にとどまらない、「我が家」としての付加価値づけをしていくことによって、長く住む価値があるような住まいづくりに貢献できるものと考えます。