大規模修繕工事を待たずにマンションの居室で発生した漏水を補修する方法の解説2回目です。
前号では正水圧と背水圧、躯体の挙動についての基礎知識を説明しました。今回は、コンクリート等の材料の強度を解説します。
基礎知識3 圧縮、せん断、引張強度
コンクリートのみならず、どんな材料でも圧縮強度>せん断強度>引張強度となります。強度の比率としては10(圧縮):4(せん断):1(引張)程度となります。
大規模修繕で施工される防水層には先週(166号6ページ参照)解説しました正水圧が加わり、これは材料を圧縮する方向の応力ですので防水層の強度が問題になることはありません。
ところが居室に漏水があって室内側に防水材を塗るとしますと漏水が背水圧として作用し、防水層の引張強度は弱いため容易に破断します。これが室内からの漏水補修を困難にします。
そこで考えられたのが樹脂注入という工法です。樹脂注入によりクラック内に防水層を形成すれば引張の4倍ほど強いせん断強度が作用し、さらに躯体を貫通できれば最も強い圧縮強度が作用することになり防水性が高まります。
■高圧注入工法
高圧で注入樹脂をクラック内に注入する工法。材料のせん断及び圧縮強度が生かせるため短工期、低コストで耐久性の高い防水層が形成できます。
■裏込工法
地下でのみ施工できる工法です。
躯体を貫通し外壁側の土の中にカーテン状の防水層を作ります。水圧に対し完全に圧縮側に防水層ができることから防水性は高圧注入工法より高まりますが、工期が長く注入樹脂も大量に必要なため、コストがかかります。
大規模修繕工事新聞 167号 23-11
高圧注入法
裏込工法