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マンションストック長寿命化等モデル事業成果報告 その1/国土交通省 先導的な10マンションの取組事例を紹介

国土交通省は2月13日、東京都千代田区の主婦会館プラザエフおよびWeb配信で、マンションストック長寿命化等モデル事業成果報告会を開きました。当日は会場とオンライン合わせて約700人が参加しました。マンションストック長寿命化等モデル事業は、マンションの長寿命化等を実現する先導的なマンションの改修や建替えプロジェクトに対する支援制度で、事業前の計画段階で年500万円(上限、最大3年)、工事の実施段階で1/3の補助が受けられるものです。成果報告会では、これまで実施された先導的な10マンションの取組事例の発表が行われました。今号では、5マンションの取組事例を要約して紹介します。国土交通省では平成6年度も継続して事業を実施する予定としています。


【報告】
マンションは過去に2度、雨水が下水道等の排水施設の能力を超え、排水できなくなり浸水する内水氾濫の被害を受けました。計画支援事業では、内水氾濫の浸水状況を予測し、基準点より85㎝の浸水深を目標にした水害対策が適切と判断。
また建物調査から70年超の総耐用年数が見込まれました。
その結果を、浸水対策・建物診断をする前の「従前価格」、後の「従後価格」として、不動産の鑑定評価に適用しました。すると、水害の前と後では13%ほど価格が下がることがわかりました。価格は3年ほどすると戻りますが、記憶の風化によって価格が上昇するのではなく、水害対策を施したから価格の下落がないという理解です。
工事は、常設の止水版と収納式の止水版の設置、換気口や点検口の防水化、室外機の嵩上げ等を実施。今後は管理組合で継続的に止水版設置工事の訓練を行い、居住者のコミュニケーションツールとしての活用を期待しています。
【報告】当初、マンションのエレベーターは1981年耐震基準でした。2021年に起こった地震で約13時間止まった事象が発生しています。
計画支援の中で、耐震改修を超える免震構造で新しいエレ
ベーターを増築する可能性を併せて検討しました。
課題は建築基準法上での計画性、実際の施工性が難しいことでしたが、2014年耐震基準への改修案と免震増築案の見積もりを取って比較したところ、エレベーター3基での増築案が約2億円に対して、14耐震改修案は約9,000万円となることが判明。改修検討報告会では、冠水対策(扉等の防水対応)と非常電源でのエレベーター給電と照明確保を加えて1億1,600万円と説明しました。
この後、工事支援を受けて令和4年の総会で可決し工事を発注、令和5年度に工事はすでに完了しております。この内容については、横展開として、2022年の日本建築学会大会、デザイン発表会に論文等を報告しています。


【報告】

排水立管の漏水事故が2018年から6件発生しました。
2019年、管理組合に漏水対策委員会を組織し、コンサルタントと契約を結びました。
2020年、抜管調査を4件実施。台所系と洗面・浴室・洗濯系雑排水立管(排水用鋳鉄管)酸洗浄をして測定したところ、配管の肉圧は3.5mm。減肉率も50%台が多くあり、いつ漏水してもおかしくない状態であることがわかりました。
工事は2022年4月~9月、298戸すべての排水立管を塩ビ管+耐火二層管に更新。今後のメンテナンスを考えて点検口の増設や屋上通気設備の補修を行いました。同時にマンション管理計画認定制度も挑戦して、9月に取得。2023年には第2回大規模修繕工事を終えました。
排水立管の漏水工事からはじまって、認定マンションも取得、マンションストック長寿命化等モデル事業の補助制度も利用させていただき、「コミュニティの形成を中心にしながら、住みよい100年住めるヴィンテージマンションを目指せていければ」と思っています。



【報告】

苗場スキー場の一角、リゾートマンションが結構多いエリアの建物です。断熱不足による冬季の居住環境が劣悪(室内の温熱環境が悪い)ということで、調べたところ、外壁の内部側は発泡ウレタン25mmの吹き付けで熱抵抗値は0.74㎡ k/w。断熱性等級4の基準値1.5㎡ k/wと比較しても半分以下でしかありません。外壁サッシでは特にシーリングの経年劣化がみえ、給気は外気をそのまま入れている状況です。
スキー場のマンションなので、年を通して不在率が高いのですが、住民アンケートによると、冬暖かく夏涼しい環境や光熱費の節約、結露、カビの減少など、住み心地に対する期待が全体の約8割でした。つまり、厳しい環境にあるので利用率も低いのではないかということです。
課題解決として、①窓改修(ガラスの複層化)、②断熱強化(外壁の外断熱化)、③導入外気処理(外気処理用外調機、予熱加熱用ボイラー設置)が有効と考えています。
令和5年度中に総会決議を行い、6年度の4月以降、工事に着手する予定です。
「横展開へ向けて」では、都心部の超高層マンションの長寿命化モデルに対応できるデータ蓄積、寒冷地仕様の大規模修繕モデルとなるデータ蓄積をして広く知らしめていきたいと思っています。 【報告】テラスハウスは低層で耐震や設備的な課題が少なく、躯体保全と環境改善によって長寿命化が期待されます。具体的には外断熱改修を施すことによって比較的簡便かつ効果的に実現すると考えられます。
しかし、首都圏・近畿圏(温暖地)での外断熱改修の事例は少なく、テラスハウスの事例はありません。そこで本プロジェクトでは、外断熱改修と開口部改修、大規模修繕を一度に行い、その効果の確認と評価、それらの公開発信を通してテラスハウス型マンションの長寿命化モデルケースとすることを目的としました。
外断熱改修の保護効果は、建物寿命が延び、大規模修繕工事の周期を延ばすことでライフサイクルコストの低減が期待できることです。
とはいえ、外断熱改修と開口部改修を合わせると、通常の大規模修繕の2、3倍の費用を要します。それを管理組合に理解してもらいながら提案した、ということです。
建物に関するアンケートの結果では、開口部、断熱性能、水道に不満が集中していました。その後、勉強会や外断熱改修を施した団地の見学会を行い、勉強会でのデータ・数字と、見学会での体感の両面で説明材料を組み立てました。
資金計画のシミュレーションでは、20年借り入れを提示。最も優先度が高い断熱改修は、3つの工事案を作成し、業者見積もりを実施し、概算工事費を算出しました。
2022年度に工事支援の採択を受けて、外断熱+開口部改修を実施。二期工事として広場等の改修工事を行い、2023年8月に竣工しました。


大規模修繕工事新聞 171号2024-03