-主な改正事項のポイント-
令和7年標準管理規約(単棟型)改正案パブリックコメント用公表資料より
一般社団法人全国建物調査診断センターが10月26日に配信開始した第77回管理組合オンライン・セミナーの要約を採録します。今回は第77回第2部の「区分所有法改正に伴うマンション標準管理規約の見直し-主な改正事項のポイント-」です。
視聴動画は下記URLよりVimeoとYouTubeで公開しています。
//zenken-center.com/77sem1026/
標準管理規約は10月17日、公表されました。詳しくは次ページをご確認ください。
本セミナーのスライド作成日は10月9日だったため、パブリックコメント用公表資料を使用しましたが、本ページでは17日公表後の条文を参考に修正しています。
それでは、標準管理規約単棟型の主な改正ポイントをみていきましょう。条文の数字が前後しますが、国土交通省の資料に記載された順番で行います。
■総会決議における多数決要件の見直し①
まず、第47条1項で、総会の定足数を議決権総数の「半数以上」から「過半数」となりました。これは区分所有法で定足数の規定「過半数」が新設されたため、それに合わせたものです。
3項の「組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し」、これは、前はありませんでした。要するに、特別決議においても、定足数ができたということです。特別決議を採決する際、まず組合員総数の過半数が出席して、「出席組合員及びその議決権の各4分の3以上で決する」となったわけです。
簡単にいうと、議決権が一律の100戸のマンションで、普通決議は51人以上出席して、26人以上の賛成があれば可決。これは今までと変わりません。
特別決議は、51人以上が出席して、その4分の3というと、38.25、つまり100人中39人の賛成で可決することになります。
これまでは100人の4分の3、つまり75人以上の賛成がなくてはならなかった、例えば管理規約の改正などの特別決議が、39人の賛成で可決できるようになるわけです。
先にも述べましたが、これは区分所有法の規定が優先されるので、来年の4月1日以降は、規約改正などの特別決議がとても楽になるということになります。
ここは、法律の強行規定なので、それぞれの管理規約を来年の4月1日以降は、どのマンションでも有効になると思ってください。
■総会決議における多数決要件の見直し②
47条4項は新設されたものになります。
この4項は、特別決議は4分の3が原則だったところ、出席組合員及び議決権の各3分の2以上で決する特別決議を新しく作ったということになります。
条文を要約すると、第一号イ「共用部分の保存に瑕疵の除去に関するもの」、ロ「バリアフリー化」、第二号「共用部分の変更に伴う専有部分の保存行為」、第三号「大規模滅失の復旧における共用部分の変更決議」ということになります。
第一号イは、例えば外壁タイルが剥がれそうになっているというような建物の瑕疵があって、それを直すのに躯体を壊さないといけないような、共用部分の重大変更に当たるようなものでも、3分の2の多数決要件でいいよ、ということです。
また、ここにある「他人」は、第三者だけではなく、マンション住民も含むと考えられます。
ロの「バリアフリー化」はそもそも躯体をいじらなければ普通決議でよいのですが、やはり重大変更が生じる場合は4分の3が必要でした。それを3分の2でよいという形で緩和されたというのがロということになります。
また、階段室部分を改造して、建物の外壁に新たにエレベーターを設置する工事は、もともと共用部分の重大変更として、4分の3以上が必要でしたが、3分の2以上の賛成により実施可能となりました。
第二号の「共用部分の変更に伴う専有部分の保存行為」とは、3項三号にある、「共用部分の変更に伴って必要となる専用部分の保存行為等」で、マンションの共用部分を工事する際、その工事に付随して、各区分所有者の専有部分に行う必要がある、最小限の維持・保全のための行為を指します。
三号は、建物の各の2分の1を超える部分が滅出した場合、いわゆる大規模滅失の復旧について、4分の3決議が3分の2に軽減されました。
なお、総会の定足数は特別決議の事項と同じく、「組合員総数」「議決権総数」の過半数が必要となります。
■総会決議における多数決要件の見直し③
47条5項、6項は、客観的な事由が認められる場合のマンション再生決議、建替え・更新・売却・除却等の多数決要件
5分の4以上を、4分の3以上に緩和するというものです。
客観的な事由とは、以下の区分所有法第62条第2項を指します。
| ①地震に対する安全性が建築基準法等の基準に適合していないとき ②火災に対する安全性が建築基準法等の基準に適合していないとき ③外壁、外装材等の部分が剥離し、落下するおそれがある基準に該当するとき ④給排水等の配管設備の損傷、腐食等により衛生上有害となる恐れがある基準に該当するとき ⑤バリアフリー法等の基準に適合していないとき |
以上の5つは、本来必要な「5分の4以上」の多数決要件を「4分の3以上」に緩和できるようになるわけです。
また、これまで「建替え決議」だけだった規定に、建物更新決議、取壊し決議が新しく追加されました。
さらにマンション再生では「建物更新」という用語が新たに組み込まれています。これは、いわゆる「一棟リノベーション」を指します。
「一棟リノベーション」とは、建物の構造を存続させながら、スケルトン状態、つまり内部の床や壁、天井、配管、空調設備などすべて撤去し、コンクリートや鉄骨の骨組みだけにして、専有部分と共用部分の両方を再生させる手法です。
すべてを解体して建物を再建する建替えと比べ、既存の骨組みを生かしながら建物を再生する一棟リノベーションが今後、選択肢として採用されるのか注目されます。
6項は、マンション再生等に係る決議のうち、建物敷地売却決議又は建物取壊し敷地売却決議の規定で、5項と同じく、①~⑤の多数決要件を「4分の3以上」に緩和できるものとなっています。建替えは無理そうだから、建物と敷地を一気に売却しようという制度です。
建替えが思うように進まない現状から、区分所有法改正の目的の本丸がここにあると言われています。
■総会招集時の通知事項等の見直し
第43条は、総会招集時の通知事項において、議案の要領が新しく追加されたものになります。
これまでの標準管理規約では、総会招集時の通知において、総会の目的が①規約の変更等、②共用部分の重大変更、③大規模滅失の復旧、④ 建替えまたは敷地売却の決議である場合に限り、議案の内容を組合員に通知することとなっていました。
新標準管理規約では上記①~④にかかわらず、すべての事項について議案の要領を通知しなければならなくなります。
例えば、役員の選任について、いままでは議案書に「役員の選任」といった議題だけでよかったのですが、これからは、今期の役員は101号室Aさん、201号室Bさん等々と、議題とその内容も書かないとダメ、ということになるということです。
総会の議案書は管理会社が作っているから安心だと思われるかもしれませんし、これまでも全議案について議案の要領を記載しているので大丈夫、という管理組合が多いかと思います。
ただ、法律が変わって、全議案に対して議案の要領を記載しなければ行けなくなったということだけは認識しておいてください。
これまで意識していなかった総会議案書も、今一度確認してみてはいかがしょうか。
※つづきは、VimeoまたはYouTubeでご覧になれます。
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大規模修繕工事新聞 2025-11月 191号





