「横浜市は、大規模修繕工事に入札が適さないことを理解されていないようですね」―10月16日、横浜市と横浜市住宅供給公社が発表した「マンションの大規模修繕入札代行サービス」に懸念の声が上がっています。
設計監理方式による大規模修繕工事実施の流れとして、①建物調査、②設計(工事計画)、③施工業者選定、④工事実施(工事監理)の中で、③施工業者選定だけを取り出し、横浜市住宅供給公社が入札のみのサービスを行うというものです。(右図)
工事の「入札」方式は、複数の受注希望者の中から最低価格で落札した業者を受注者に選ぶ方式です。
現在、設計・監理方式で一般的に行われている施工業者選定は、複数の見積もり参加希望者に見積金額を提示させるとともに、施工業者からのプレゼン、管理組合から施工業者へのヒアリングなどを経て、技術力、施工実績、保証内容なども含めて総合的に判断する方法が採用されています。
ところが、横浜市の入札代行サービスでは、こうした業者選定に関するプロセス(見積もり比較・検討)をなくし、「入札」だけで決めることになります。
つまり、単に、一番安い金額の札を入れた施工業者を選定する仕組みといえます。
施工業者の参加資格は、「横浜市有資格者名簿より」とあります。マンション改修に特化していない施工業者でも、最低価格で落札できることになるのです。
横浜市のサービス導入理由
横浜市では、入札代行サービス導入の背景として、「昨今、各種報道にて大規模修繕工事の一部において不適切な形で入札が行われている場合がある」とし、その悪質な事例として、「公募としつつもあらかじめ決まっていた業者が不当に割高な工事費で落札するといったケース」などを上げ、国交省からの①設計コンサルタントに関する不適切な事例への注意喚起、②談合報道に起因する工事請負契約時の留意事項を上げています。
こうした状況を打開するための方式として、入札代行業務のみ横浜市住宅供給公社に委託する入札代行サービスを開始したというわけです。
入札代行サービスの費用
建物調査、設計(工事計画)、工事監理をのぞく、施工業者選定だけで、1%の利用料は受け入れられるでしょうか?
「1億円の工事規模の施工業者選定だけで100万円は高すぎ。結局、費用がネックとなって採用されないのでは?」―大規模修繕工事の設計コンサル、施工業者、メーカーで組織するNPOの役員の話です。
繰り返しますが、入札代行サービスの施工業者選定は「入札」だけで、プレゼンやヒアリング、見積比較などの総合的に判断する方法ではないものです。
入札代行サービスの了解事項
横浜市住宅供給公社の免責事項
最後につけ加えておきたいのが、入札代行サービスの了解事項および横浜市住宅供給公社の免責事項です。
資料にあるものをそのまま添付しました。(右図)
①設計図書の内容については、当然設計コンサルの責任としています。あくまで「入札代行」のため、②管理組合への理事会や総会への出席・説明は行いません。
③落札者とのヒアリングもありません。④入札スケジュールのとおり管理組合で必要な手続きをしてください。⑤落札者との契約も管理組合で直接行ってください。
⑥トラブルが起こっても、設計コンサル、落札者、管理組合の当事者間で行ってください。横浜市住宅供給公社にトラブルを持ち込まないでください。
⑦サービスの目的は談合等の不適切行為を縮減させるものであるため、不適切行為があってもそれが防げないことの責任は持てません。
⑧⑨はよいとして、⑩では「トドメ」とばかりに、落札者の審査は「提出書類の審査に留まるため」横浜市住宅供給公社には責任はない、と締めくくっています。
本当に管理組合のためになるサービスなのか?
確かに談合、なりすまし等、マンションの大規模修繕工事を取り巻く問題がはびこっています。
とはいえ、最低価格での入札がマンションに適するのかといったら、それはNOといえるでしょう。
なにより、マンション大規模修繕工事は、居住しながらの工事です。落札者の素性もわからず、知ったところでマンションの実績が少ない施工業者だった場合、どうするのか?納得がいくまで入札を繰り返すのでしょうか?
それならば、やはり施工業者からのプレゼン、それも提案も含めた見積提示。そして現場代理人を入れたヒアリング。現場代理人の人柄の印象は大切です。
このように総合的な判断をして施工業者選定をしなければ、工事がはじまってからの不安は拭えないものと思えます。
そして入札代行サービスの利用料が高い。
だいたいなんでサービス利用料が入札価格をベースにした%なのでしょう?そういう発想こそ、そもそもバック札価格をベースにした%なのでしょう?そういう発想こそ、そもそもバック入札代行サービスのイメージで飛びつく管理組合もいるかと思いますが、本当に管理組合のためになるサービスなのか、今後の各方面からの反応を見守りたいと思います。
大規模修繕工事新聞 2025-11月 191号







