警察庁および財務省は、空き家を特殊詐欺の詐取金や不正薬物の送付先(受け取り場所)として悪用するケースが増加しているとして、注意喚起を促しています。
空き家を悪用する手口について、警察庁等が発表している具体例は下記のとおりです。
例1
・空き家(空き部屋)の郵便受け(集合ポスト)に架空の表札を貼付し、その後、投函された不在連絡票を抜き取り、宅配業者、郵便局等から現金や不正薬物等が入った荷物を受け取る。
例2
・電気、ガス等のメーターボックスに保管された内見用の合鍵を用いて、空き家(空き部屋)に侵入し、住人になりすまして現金や不正薬物等が入った荷物を受け取る。
例3
・複数の空き家(空き部屋)で、同じ暗証番号を流用していたため、犯罪組織がその暗証番号を把握し、空き家(空き部屋)に入り、入居者を装い荷物を受け取る。
賃貸アパートが犯罪グループの活動拠点としてクローズアップされがちですが、当然ながら空き家が目立つ管理不全マンションでも十分拠点として悪用が可能です。
また、大規模団地、タワーマンションにおける大規模修繕工事の「なりすまし」問題があるように、住民間のコミュニティーが隅々まで行き届かないマンションでも注意が必要といえます。
こうした空き家を悪用したマンションでの犯罪対策では、一番の効果は当然コミュニティーの醸成です。そして、そのためにも組合員名簿、居住者名簿の作成が手始めとなるのではないでしょうか。
マンション標準管理規約(令和7年10月17日改正)では、組合員名簿等の作成(31条の2)について、「理事長は、組合員名簿及び居住者名簿を作成して保管しなければならない」とする規定があります。
居住者名簿(組合員以外の賃借人、その同居人等も含む)の作成に当たっては、災害時における避難の支援や安否の確認等の観点から事前に高齢者や要介護者を把握することを目的にしています。
ただし、居住者名簿の目的は災害時だけでなく、よりよい住環境を確保するためにも重要です。
19条(専有部分の貸与)では、その専有部分を第三者(賃借人)へ貸与する区分所有者に対し、以下の取り決めがあります。
2項 契約の相手方にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。
3項 第三者に専有部分を借用した旨の届出を管理組合に提出させなければならない。
この19条2項、3項で注目すべきは、賃貸に出す外部区分所有者が管理組合に提出するのではなく、外部区分所有者が貸与する第三者に、誓約書と届出を提出させる、という決まりです。賃借人本人にもしっかり居住ルールを守ってもらわなければならないことを規約で定めているわけです。
「他人に貸すのなら、きちんとした人を選んでほしい」というのが、居住する区分所有者の当然の主張であり、外部区分所有者の責任でもあるといえます。
19条には続きがありまして、19条の2(暴力団員の排除)専有部分の貸与に関し、暴力団員への貸与を禁止する旨が定められています。規約のコメントでは「暴力団排除条例を参考に規定することが考えられる」とあります。
19条で、居住ルールを守ってほしいと想定していた「第三者」は暴力団員でした。
しかし、いまや暴力団ばかりが恐怖かと言えばそうではありません。詐欺の元締めは、普通の若者を巻き込み、そして高齢者をターゲットに、市民生活に入り込んできます。
そうであれば、暴力団だけでなく、特殊詐欺を含めた犯罪グループをも対象とする規定を盛り込み、マンションにおいても特殊詐欺、不正薬物等の犯罪防止対策に取り組むべきではないでしょうか。
大規模修繕工事のなりすまし問題も同様です。
悪人はどこにいるのかわかりません。そして、いつでも隙を突いて弱い者を狙ってきます。
来年4月1日に施行される区分所有法の大改正があり、マンション標準管理規約も大幅に改正されました。
この機会に、規約条文を丁寧に見返し、犯罪グループに利用されることのない、住環境を守るための管理規約の見直しをされることをおすすめします。
<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2025/12/02>
大規模修繕工事新聞 2025-12月 192号







