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第78回管理組合オンライン・セミナー採録Part.3

第78回管理組合オンライン・セミナー採録Part.3
「AIによる長期修繕計画見直しサービス」スタート
講師 全建センター・長期修繕計画担当相談員兼理事・水島一氏(マンション管理士)
//zenken-center.com/78sm

「AIによる長期修繕計画見直しサービス」スタート

  全国建物調査診断センターでは、これから「マンションAIによる長期修繕計画見直しサービス」がスタートいたします。
  本サービスがスタートするに際し、まずどういった背景でこのサービスを提供するか、またなぜ「AIと長期修繕計画なのか」を含めまして、私の方から説明させていただきたいと思います。

なぜ、AI×長期修繕計画見直しなのか
  当センターでは、特に「マンションAI®」に関して非常に力を入れてまいりました。
 なぜこういった背景があるか。
 近年、住民の高齢化、マンション自体も老朽化が進んでいます。そして修繕費の高騰が日々進んでおり、こちらが管理組合の予算を圧迫しています。
 将来における修繕工事、これからの長期修繕計画というのはやはりデータを活用した合理的な見直しが必要であると当センターでは考えておりますので、このサービスをスタートした次第でございます。
 長期修繕計画の作成主体は、多くの管理組合ではおそらく管理会社、あるいは設計事務所であると思いますが、現状の長期修繕計画の問題点とは、次の3つに収斂(しゅうれん)されるのではないかと思っています。
・作成者の「経験」と「勘」に依存
・修繕周期の設定が画一的
・マンションの実情に合っていない
 以上は我々が相談を受けている中でよく見受けられる現象です。作る方の能力に依存していること、そして修繕周期が国交省の方のガイドラインに則ってますが、マンションの実情に合っていない、実際に絵に描いた餅になっているところが大きな問題点だと思います。


AIにできること
 現在、AIは今様々な分野で広がっています。
 我々がこの業界で、特に長期修繕計画においてAIに求めるものは、次の3つです。
1.劣化傾向分析:過去データから劣化速度を学習
 ⇒最適な修繕時期を決めることができる
2.コスト予測:材料単価や工事費の変動を予測
 ⇒AIは常に学習しているため、最新情報取得
3.最適スケジューリング:修繕のタイミングを自動最適化
 ⇒複数パターンの提案が可能

 まず、劣化の傾向と分析をAIは行います。AIは常に学習していますし、日々成長しています。
 例えば、過去のデータから劣化速度を学習し、それを各マンションで最適な修繕周期をAIに求めることができます。
 コスト予測では、材料単価、工事費が日々変わってきています。来年の今頃はまったく今と違うような単価になっているかもしれませんが、先ほど申したようにAIというのは常に学習をしているので、最新の情報を取得することが可能になってまいります。
 3つ目が一番重要だと考えられるのですが、最適スケジューリングです。
 先ほど、長期修繕計画が画一的な設定になっていると申しましたが、これは長期修繕計画がマンションの実情に合ってないとした場合、ではどのタイミングで修繕を実施するのがベストなのか。1の劣化傾向分析、そして2のコスト予測を掛け合わせて、最適なスケジューリングをしていくことが、個々のマンションに非常に求められるものだと考えらます。
 例えば、築年が12年経ったから大規模修繕工事を行うというのではなく、劣化の現象、コストを考えたときに自分のマンションではどのタイミングでやるのがベストなのか。複数のパターンの修繕タイミングをAIに求めることができます。


AI導入ステップ

①データ収集(点検記録・修繕履歴・材料単価)
管理組合の過去の修繕履歴、各種法定点検等の記録、これまでの実際に行った工事の単価等をすべてAIに学習させます。
②AI構築(劣化・費用予測)
この学習によりAIを構築し、劣化等の費用の予測を行います。
③シナリオシミュレーション(周期・費用比較)
周期や費用の比較を行い、いくつかのパターンが提案されます。様々なシナリオのシミュレーションができることになります。
④最適化提案(修繕優先後・予算配分)

 そして最適化提案では、シナリオシミュレーションから実際にどのタイミングでやるのがベストなのかをAIに求めて、管理組合に最終的な提案を差し上げるようなサービスにしていきたいと考えています。


修繕費の見直しの導入例

 まだテスト段階ですが、グラフをご覧ください。当センターで試験的に取り組んでいる修繕費の見直しの導入例です。
 現在から20年後と書いてますが、1回目の大規模修繕を迎えたマンションなので、現在が築15年の物件だと想像してみてください。20年後は築35年になるということです。
 築35年となると、設備関係のさまざまな工事も含んできますが、従来の長期修繕計画とAIが見直したシミュレーションを比べると、かなり金額にばらつきが生じています。
 やはりAIを使うことで最適化できる。そして工事も先送りさせたり、分散させたりすることでコストを抑えるテストシミュレーションとなっています。

 

 

AI×長期修繕計画の期待される効果

・修繕費の見通しの精度向上
・修繕積立金不足のリスクを早期把握
・長期修繕計画作成の効率化
・合意形成のスムーズ化(数値化)

 今後、AIに期待される効果としまして、修繕費の見通しの精度の向上、レベル上げていく。そして修繕積立金の積立不足のリスクの早期把握。例えばこの値上げ幅はどういった形でどのタイミングで来るのかというと早期の把握を求めていきます。
 そして、今まで長期修繕計画の作成は非常に負担手間がかかってましたが、これを効率化させていきます。
 最後、合意形成のスムーズ化です。AIは数字そして論理的な観点で作成をしますので、管理組合内で揉める要素が出てこない。数値化できちんと説明をするということが可能になります。
 今後の当センターのAI長期修繕計画見直しサービスの展開ですが、次はクラウドAI(Power BI、ChatGPT)と連携することによってさらに精度を高めていきます。
 それをすることによってまた継続的に学習をしますので、どんどん精度が上がってまいります。
 精度が上がると、データの標準化・共有化、そして連携が取れてまいりますので、このようなロードマップを描きながら、AI長期修繕計画サービスをさらに発展させたいと考えております。
 本日、このセミナーを拝見していただいた方に関しましては、ご自分の管理組合、そして理事会等にお持ち帰りいただきまして、必要ありましたら、私の方で直接お伺いにあがってご説明をさせていただきたいと思っております。
 本日は最後までご清聴いただきまして、誠にありがとうございました。

大規模修繕工事新聞 2026-02月 194号