断熱材40%、シンナー製品最大80%値上げ
中東情勢の緊迫化に伴うホルムズ海峡の混乱は、単なるエネルギー問題に留まらず、マンション大規模修繕工事に大きな影響を与え、現状は「危機」にあるとさえ考えられます。
問題は、建材の約8割を原料とするナフサ(粗製ガソリン)の供給不足です。ナフサの不足を背景に、大手メーカーは断熱材の40%値上げ、シンナー製品の最大80%という値上げも打ち出しました。 一部ではユニットバスの受注停止や、補修剤の出荷制限も始まっています。
特に深刻なのは、管理組合が悲鳴を上げる分譲マンションの大規模修繕工事への影響です。
現場では「足場は組んだが塗料が届かない」という異常事態が常態化し、工期の遅延がさらなる人件費の増大を招く悪循環に陥っています。
数年前に策定された長期修繕計画は、1.2倍から1.5倍に跳ね上がった見積もりの前で無力化しています。修繕積立金不足から工事項目の削減を余儀なくされ、中には一時金の徴収に追い込まれる組合も出はじめています。
もはや管理組合の力、またはマンション改修業者の「自助努力」で解決できる段階を遥かに超えているといっても過言ではありません。
「ナフサ・ショック」への対策は?
状況が落ち着くまで、大規模修繕工事そのものを控えるという選択肢もあります。しかし、すでに着工している場合、材料が入荷するまで足場を架けたまま待つのか、一旦解体して中断するのかといった苦渋の決断を迫られるケースが出ています。
現在、もはやそうした危機的状況にあるのです。
「ナフサ・ショック」による資材高騰と供給不安定を受け、これから大規模修繕工事を予定する管理組合が検討すべき対策は、「工事計画・仕様の見直し」「資金計画のアップデート」「契約内容の精査」の3点に集約されます。
1. 工事計画・仕様の見直し
従来の計画に固執せず、現在の資材状況に合わせた現実的な判断が求められます。
特に供給が滞っているシンナーなどの溶剤系塗料から、水性塗料への切り替えを検討することが考えられます。また、特定のメーカーの材料が入らない場合は、他メーカーへの変更も視野に入れる必要があるでしょう。
予算不足に対応するため、今回は鉄部塗装のみにするなど、工事項目を削減・限定して「今できる修繕」を再定義することも対策のひとつです。
2. 資金計画アップデート
数年前の物価水準で作成された長期修繕計画は、もはや通用しない状況です。
予算オーバーが確実な場合、予備費の活用や、一時金の徴収、修繕積立金の値上げについて臨時総会で議論を始める必要があります。
3.契約内容の精査
資材価格の変動が激しく、従来の手法では対応しきれないリスクがあります。
契約から着工までのタイムラグによる欠品を防ぐため、施工会社に対して資材の早期確保を確約させることが重要です。工事期間中にさらなる資材高騰が起きた際、その費用をどう分担するかを契約書に明記し、リスクを明確にしておきましょう。
最後に
政府の対応については現場から「認識が甘い」との批判もあり、供給不足の解消には時間がかかる可能性があります。
さらに資材不足に加えて、人材(職人)の確保も難しくなっている昨今です。マンション改修を取り巻く環境は今、何から何まで、逆風が吹いている状況にあるのです。
全建センターでは専門スタッフによるコンサルティングを行っております。専門家による客観的なデータなどから、情報を得て、組合員の不安を解消する手立てを講じることも必要です。
管理組合としては、現在の「目詰まり」が長期化することを前提とした、慎重かつ迅速な意思決定が求められています。
<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2026-5-02>
大規模修繕工事新聞 2026-05 197号





