保険金支払事例
保険料28万円で、補修費250万円の事例も!
国土交通省によって制度が開始され、4年が経過した大規模修繕工事瑕疵(かし)保険ですが、昨年度だけで申込件数が全国で800棟を超え(国土交通省調べ)、認知度は年々高まっています。現在、管理組合の関心の多くは保険料の額にあるようですが、逆に加入していたことで保険金が支払われたという保険支払事例も参考にしたいところです。
事故例 ①
・物件概要
築35年・1棟・75戸
・工事内容
排水管更新工事(内装工事含む)
・事故内容
排水管更新工事完了の2年後、住戸内の壁紙等の内装やフローリングなどで水濡れ損害が起きた。保険法人が派遣した検査員の調査の結果、排水用塩ビライニング鋼管の排水たて管と専有横引き管を接続する継ぎ手部分で施工不良があったと判断。補修工事が行われた。保険金総額250万円、補修期間は約2週間だった。
・保険金の支払額(算出例)
約250万円(工事部分の補修費 ※共用部分補修費、内装部分補修費、経費含む)
(補修費総額323万円−免責10万円)×縮小填補割合80%=保険金支払額250万円
・請負工事金額(保険金支払限度額)
約5,500万円(6,000万円)
・保険料等
約28万円(基本保険料+現場調査料等)
事故例 ②
・物件概要
築24年・1棟・30戸
・工事内容
排気ガラリ(通気口)のシーリング打ち替え工事、外壁改修工事
・事故内容
工事完了後1年、天井から雨水の浸入が発生し住戸内の壁紙等の内装やフローリングなどで水濡れ損害が起きた。
保険法人検査員の調査の結果、シーリング工事の外壁と排気ガラリの取り合い部分の不具合が原因と判断。補修修繕工事が行われた。
・保険金の支払額(算出例)
約150万円(工事部分の補修費 ※共用部分補修費、内装部分補修費、経費含む)
(補修費総額200万円−免責10万円)×縮小填補割合80%=保険金支払額150万円
・請負工事金額(保険金支払限度額)
約2,800万円(3,000万円)
・保険料等
約18万円(基本保険料+現場調査料等)
事故例 ③
・物件概要
築13年・1棟・40戸
・工事内容
バルコニー防水工事、外壁改修工事
・事故内容
工事完了後1年、バルコニー防水工事を実施した立ち上がり部分から雨水の浸入が発生し住戸内の壁紙等の内装で水濡れ損害が起きた。保険法人検査員の調査の結果、バルコニーと掃出し窓の取り合い部の防水施工不良(隙間)によるものであり、当該施工個所からの雨水侵入が原因であると判断。補修工事が行われた。
・保険金の支払額(算出例)
約110万円(工事部分の補修費 ※共用部分補修費、内装部分補修費、経費含む)
(補修費総額148万円−免責10万円)×縮小填補割合80%
=保険金支払額110万円
・請負工事金額(保険金支払限度額)
約3,200万円(4,000万円)
・保険料等
約20万円(基本保険料+現場調査料等)
※保険料は着工前に工事会社が支払います。また、工事会社が倒産した場合などでは、発注者(管理組合)が保険金を請求できます。その場合の縮小填補(てんぽ)割合は100%となります。
●大切なのは想定外トラブルに備えること
以上、保険金支払事例3件を紹介しました。
3件事例とも保険金の支払額は100万円、200万円台ですが、保険金支払い限度額は数千万円のため、保険期間中に瑕疵・不具合が発生すれば、その他の不具合個所の保険金も請求することができるので安心です。瑕疵と疑われる個所をスムーズに補修できれば、トラブルになることもありません。
現在、保険金支払い完了の事例は3件ですが、工事会社や管理組合から雨漏り、水漏れ、その他瑕疵・不具合の相談事例はさらに多く、増加傾向にあります。
ただし、大規模修繕工事瑕疵保険は、着工前の申し込みが必要なため、工事後の瑕疵・不具合が発生してしまった後では、遅いといえます。
管理組合や業界関係者とっては「瑕疵保険加入を検討する」ではなく「当然に加入すべき」という理解を持つことで、想定外のトラブル回避につながると考えてほしいものです。
(大規模修繕工事新聞 2014-6.5 No.54)