第13回マンション問題勉強会
管理費問題を中心に裁判例を紹介
大田区マンション交流会(高橋明彦会長)を中心とするマンション問題勉強会が7月20日13時30分から、大田区新蒲田の大田区民センターで第13回会合を開きました。
当日は第1部で希望法律事務所の佐藤元・弁護士が『マンション管理に関する最近の裁判例―特に管理費の問題を中心として』をテーマに講演。第2部では平成25年7月に制定した「豊島区マンション管理推進条例」の施行1年経過後の状況を豊島区議会の西山陽介議員が報告しました。
今回は佐藤弁護士の講演模様を抜粋して紹介。次号で豊島区のマンション管理状況の集計結果を掲載します。
管理費からの町内会費等の徴収・支出は可能か
佐藤弁護士は「管理費の決め方を巡る諸問題」として、
1.不在組合員の管理費増額の合理性、
2.町内会費等の自治会費を徴収・支出することの可否、
3.各戸の水道料金を管理費に含めることの可否(一括検針一括徴収制度の検討)、
4.インターネットサービスに係る費用に関する裁判例の説明
を行った。
中でも、「2.町内会費等~」では、町内会費の徴収は共有財産の管理に関する事項でなく区分所有法第3条の目的外の事項であるから、規約等で定めても拘束力はないとし、管理費の中に含めることを否定した例(東京簡判平19・8・7)を紹介。
一方で、マンション建築の際の近隣住民らとの協議の結果、区分所有者は町内会に加入することとされているため、管理費から町内会費を支出することを認めた例(東京高判平24・5・24)もある。
この2例を説明した上で佐藤弁護士は、
「管理組合の行う『管理』とは建物等の管理のみでなく区分所有関係の調整をも含んだ広い概念である」とし、「コミュニティの醸成が、建物等の円滑で長期的な管理に資するのであれば管理費に含めての町内会費等の徴収、管理費からのそれの支出は可能であると解したい」と話した。
とはいえ、裁判例では否定例が出ていること、マンション標準管理規約では管理費からの町内会費等の支出を想定していないことを考えると、「リスクがある」とも。
「いずれにしても、町内会費等の徴収をしている、またはしようとしている管理組合は検討を要する」とした。
こうしたケースバイケースで、さらにその内容がグレーゾーンに当たる場合は、専門家を交えて慎重に議論を進めていく必要があると言えるだろう。
(大規模修繕工事新聞 2014-8.5 No.56)