国土交通省住宅局建築指導課は9月30日、違法貸しルーム対策として建築基準法および関係条例の違反が判明したものについて、8月31日現在の状況のとりまとめを発表した。
調査対象は違法貸しルームではないかと一般から国や地方公共団体に通報・情報提供があったものとし、特定行政庁が立入調査や是正指導を行っている。
これによると全国の合計は調査対象1,990件のうち建築基準法および関係条例の違反が判明したものは1,027件(51.6%)で違反なしが76件(3.8%)。1都3県の合計は同1,757件のうち973件(55.4%)で違反なしが56件(3.2%)だった。
違法貸しルームとは、多人数の居住実態がありながら防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物のこと。多人数居住のほか各部屋の仕切りが燃えやすい材料でできている、窓がないなど火災の際の安全面などに問題がある。
住宅局建築指導課では7月12日より違法貸しルーム情報受付窓口を設けて一般からの情報提供の呼びかけを開始した。
また7月19日、建築士、不動産業者、建設業者が設計、仲介、工事に関与することを禁じる通知を関係団体に出している。
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分譲マンションでは裁判にもなっている。
2013年8月22日、港区麻布十番のマンション(築約30年、16戸)の1住戸(83㎡)を7人用のシェアハウスに改造して貸し出すのは、「住民の共同の利益に反する」「シェアハウスの入居者はよく入れ替わるため、マンション住民が不安を募らせている」として、管理組合がフロア所有者に使用禁止の仮処分申請を求めた。
ところが東京地裁は10月24日、申し立てを却下している。
東京地裁の判断は、専有部分をシェアハウスに改修した行為について、従前から事務所利用が認められていたこと、7人が居住することに過ぎないこと、さらに最も大きな判断理由として改修後にシェアハウスとしての使用を禁止する管理規約の改正を行ったことは「特別の影響」(区分所有法第31条1項後段)があるので無効であること等から「共同の利益に反するとは言えない」とした。
この判断は今も法曹関係者などから批判が相次いでいる。
マンション関係に詳しい弁護士は「規約改正が後出しじゃんけんであったとしても、建築基準法違反となる可能性は高く、火災などがあった場合を考えると共同の利益に反することは明らか。論点がずれている」と話す。
国土交通省でも違法貸しルームを問題視しているのは、窓や避難器具、避難通路も確保されておらずなどの事故・事件につながること。人命に関わる事件が起こる前に、きちんとした判決例が出てくることを期待したい。(大規模修繕工事新聞 No.59)