NPO日住協( 日本住宅管理組合協議会)は10月24日、日比谷図書館コンベンション大ホールで設立45周年記念シンポジウム「築30年、100万戸時代-高経年マンションの新たな管理の方向を考える」を開催しました。ここでは講演の一部を紙上採録いたします。
高経年マンションを老朽化、衰退させないためにはどうするか、を出発点として考えていきます。
まずは、管理組合のマンション管理の対応の仕方としては「静的・消極的管理」(初期段階・財産保全)から「動的・積極的管理」(成熟型管理・財産活用)への移行です。
積極的管理または経営的管理で考えられるのは⑴資金獲得業務(共用部分・敷地の賃貸経営)⑵共益的活用業務(資金獲得だけでなく共益のために)⑶生活サービス業務、の3点です。
資金獲得業務はすでに多くの管理組合で行われていますけれど、敷地の一部を駐車場として近隣にに貸すことで収入を得る仕組み。新たなニーズを発掘して賃貸化して収益を得る方法です。共益的活用業務は、それをさらにもう一歩進めた形で、ただ資金獲得だけでなく、区分所有者の有益な、例えば福祉施設、コンビニ等を呼び込むなどの方法です。
生活サービス業務についてはこれも3つあります。
1.空き住戸の賃貸借取次業務。
昨今空き住戸が多い。すると空き住戸の区分所有者は貸したくても借り手がいない。思うような家賃で貸せない。そのままにしておくと管理費用だけ徴収されてマイナスの財産となることになりかねない。それを利用できないか、と考えます。同じ団地内に親を呼び寄せる、家財道具の保管場所として貸す、管理組合がその取り次ぎをするというやり方です。いわゆる媒介業務となってしまうと区分所有法の管理の範囲を超えてしまう、他方では宅建業法の縛りがあるということになります。 当面は有料で掲示板の使用、広報誌への掲載を行い、団地内で貸したい・借りたいという人は相互に連絡してもらいます。
管理組合としては掲示板を利用させているだけですから、管理の範囲内としてクリアできるでしょう。
2.空き住戸の共用部分(規約共用部分)化業務。
空き住戸を買うとなるとおカネがかかるので無償で借りる、あるいは無償で取得する…どうせ使っておらず管理費用を負担するくらいなら管理組合に使ってもらおうという人もいます。とはいっても貰ったはいいが管理組合としてお荷物になるということにもなりかねないので、その点はそれぞれの団地ごとに決定せざるをえません。
法的には専有部分の無償提供を受けたということになると区分所有者全員の共有ということで規約共用部分にして管理組合のものにしなければなりません。3 / 4以上の特別決議が必要となりますが、おカネを払って取得するとか売却する場合は全員一致の問題が出てきます。
3.生活支援サービスの取次(窓口)業務。
そこに住んでいる高齢者に対して、あくまで窓口でありますが、生活支援サービスの事業者との窓口になる業務を行います。生活支援とは配食、買い物、電球の取替え、子の預かりまたは水漏れ補修、自動車レンタル等です。
いかに団地を活性化させ、あくまでも区分所有者のために、ハードでいえば長寿命化、ソフトでは長らく良好で豊かな住環境のもとで生活ができるという、それを管理組合が先導役と
なって仕組み作りをすることが必要となります。
管理組合が実際に行っている積極的な運営管理の例として青空市場、スクールバス、カーシェアリング、お祭り・サークル活動の補助など、必要に迫られてやっているケースがあります。積極的管理を推進する学者の立場としては理論的に大丈夫だって言わなきゃいけないと思います。マンションの中にはこれらを管理組合の業務ではないという反対者が絶対いますから。その時にどうやって説得するかが問題です。
ここでいえるのは①総会決議は尊重する②間接的利益を認識することです。
スクールバスやサークル活動の補助で直接的利益を受けているのは学童やサークルの人だけです。では他の人はなんでおカネをださなきゃいけないのか。それはの利便性や暮らしやすさを高めてマンションの資産価値を維持に貢献していることになります。こういうのを間接的利益といいます。こう考えればかなり幅広く管理組合が行うという必然性が出てきます。
またコミュニティの定義があいまいで酒飲んでいればコミュニティかと誤解されることもあるので、表のようにまとめてみました。目標はBレベル水準です。
意思決定では現状を変更する決定が円滑に行える、分担では理事が順番で回ってきたらやることが当然という住民意識です。「相互交流」にいくと、認知関係では顔がわかるといいことが結構あるわけです。騒音トラブルの低減にデータで役立っているのが証明されています。
否定意見が出てきたときに利用できるデータを学会として出していきますので、ぜひ使っていただきたいと思います。
※ パネルディスカッションで発表した管理組合の活動については次号に掲載します。(大規模修繕工事新聞 No.59)