コンクリートかぶり厚と塩害による爆裂
鉄筋コンクリート造で、コンクリートと鉄筋の間の間隔を「かぶり厚」といいます。コンクリートはアルカリ性ですが、雨や大気中の酸などによって中性化していきます。コンクリートの中性化が鉄筋に達すると、鉄筋は酸によって錆びが生じ、膨張します。するとコンクリートはひび割れ、さらに中性化が進んで脆弱化し、爆裂を引き起こす原因になるのです。
こうした構造上の耐力性、耐候性のため、建築基準法によって一定以上の「かぶり厚」が義務付けられています。
建築基準法施行令第79条によると、最低限必要なかぶり厚は耐力壁以外の壁等で2㎝以上、耐力壁等は3㎝以上、直接土に接する壁等は4㎝以上、基礎部分は6㎝以上と規定しています。
ただし、海辺などの立地条件では、塩害による劣化進行が大きいマンションがあります。新築時に規定のかぶり厚をしても、経年とともにコンクリート内の塩分濃度が高くなっていき、劣化が進むのです。
このため海辺のマンションは内陸にあるマンションより、当然外壁の爆裂といった修繕項目が多くなることを管理組合に十分理解してほしいと思います。
爆裂個所の補修は、鉄筋の錆びをワイヤーブラシでケレン・清掃したのち、防錆材やプライマーを塗布してから樹脂モルタルの埋め戻しを行います。しかし、塩害による劣化は再劣化の進行が早いケースが多く、補修効果も短期的となりがちです。
近年では電気を流してコンクリート内部の塩分を除去する「脱塩工法」など電気化学的な工法もありますが、費用対効果の面などからマンション改修ではまだ浸透していません。
(大規模修繕工事新聞 No.59)