NPO全国マンション管理組合連合会が今年2月に発行した相談対応事例集「やってみよう!自分たちのマンション管理」より、大規模修繕工事に関する部分を抜粋して掲載します。
マンションの大規模修繕工事とは
太陽の紫外線や風雨等、厳しい自然環境にさらされている建築物は、年数の経過とともに劣化が進行します。当然これはマンションにも該当し、劣化(老朽化)を避けて通ることはできません。劣化した箇所をそのまま放置すれば、住環境に悪影響を及ぼし、マンションの性能や資産価値もだんだんに低下していきます。そこで建物の状態に応じて計画的な修繕工事が不可欠となります。
解 説
マンションの各部位の耐用年数や修繕周期をもとに、まとめて工事を実施するのが大規模修繕工事です。おおむね10 ~ 15年程度を周期として行われます。適正な長期修繕計画のもとに実施するのが望ましいのですが、管理組合としては、仮に長期修繕計画がなくてもやらなければなりません。
足場等の仮設工事費は、総工事費に対し一定の割合を占めますので、足場がなければ施工できない工事については、できるだけまとめて行うのが得策だと考えられています。屋上防水工事、外壁工事(タイル貼り替え・塗り替え)、躯体コンクリート補修工事、バルコニー・共用通路・共用階段の防水・塗装工事、各種設備工事等は、足場を必要とし同時期に実施すると、工事にかかる費用等が節約でき、経済的で効率的な工事となります。
また、雨どいや外壁に取り付けられた金物類の交換も足場を必要としますから、関連する工事も集約して行います。
大規模修繕工事を実施する際は、マンション居住者が日常生活を過ごす中での工事となります。
先ほど述べましたように、工事ではマンションの周囲に足場を架けて、塗料の飛散防止のために養生ネットを張りますから、「洗濯物が指定された日にしか干せない」とか、「窓をビニールで覆うのでバルコニーへの出入りができない日」など、いろいろな制限を強いられる期間があります。
そのような影響を最小限に抑えるために、事前に掲示板等で工事の進捗状況や洗濯物が干せない日程を詳しく伝える工夫が求められます。特にバルコニー側の工事を最優先し、工事が終わり次第、解体前の完了検査の後、速やかに足場等を撤去していただくよう施工会社と入念に打ち合わせをするなど、住民対策の配慮は欠かせません。
大規模修繕工事では多額の費用を必要とします。工事内容によっては、全ての費用と修繕積立金で賄えないケースもあります。その工事費用の不足分を一時金で徴収しようとすると、区分所有者の負担が重くなり、支払を拒否される場合もでてきます。そうなると、実施すべき工事を延期または中止に追い込まれる事態も考えられます。こうした一時金徴収を避けるためには、長期修繕計画に基づいて算出された修繕積立金を積み立てることが望ましいとされています。また、金融機関から融資を検討する場合も、しっかりした資金計画を立案しなければ融資を受けられません。
全管連事務局:NPO京滋マンション管理対策協議会
☎075−351−7421
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(大規模修繕工事新聞 第09号)