元理事長が、住宅金融支援機構の共用部分リフォームローンを管理組合に無断で借りて約1,300万円をだましとっていた事件で、管理組合の賠償責任を認めた判決が過去にありました。
大手管理会社の元社員が、担当する19管理組合の資金約8,000万円を横領していたことが発覚。管理会社は被害額を弁済しましたが、1社員が8年間もにわたり着服を続けていたという、業界に波紋を呼んだ事件もありました。
近年、管理組合資金の着服・横領事件が目立っています。その多くは管理組合内部や管理会社社員の犯行で、不正な引き出しは、数年にわたり何十回と繰り返されているものです。銀行通帳、会計帳簿の改ざんは常套手段で、金額が千万単位に膨れ上がってから発覚するケースも少なくありません。
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不正を見過ごす大きな原因のひとつは、監査を行う役員の輪番制にあります。毎年交代する監事の多くは会計には素人で、会計監査に意見すら言うことはないのではありませんか?よく確かめもせずに判を押す、形だけの監査になっているのが一般的なのです。
管理会社社員の不正であれば、管理会社に弁償させることができます。しかし、管理組合内部の犯行である場合、横領した個人に対してどのような弁償の方法が考えられるでしょうか。
そうなると不祥事が発覚した場合、監査した管理組合の責任を問われない保証はありません。監事個人の責任が問われないとも限らないのです。
会計業務の監査を輪番制でアマチュアの住民だけが行うという図式がよいものと思えません。
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管理組合資産の安全を保つためには、会計業務を管理会社に任せきりにするのではなく、専門家である会計士など、第三者の外部監査が必要になってきているのではないでしょうか。
(大規模修繕工事新聞 第10号)