NPO全国マンション管理組合連合会が今年2月に発行した相談対応事例集「やってみよう!自分たちのマンション管理」より、大規模修繕工事に関する部分を抜粋して掲載します。(最終回)
マンションにとっての大規模修繕工事は、原状回復のための修繕だけではなく、グレードアップする改良工事も視野に入れて検討します。改良工事として、高齢化に伴うバリアフリー化、安全で安心な住環境を確保するためのセキュリティの強化、インターネットの高速化に対応した改善は、マンション居住者のニーズも高く、利便性や資産価値の向上につながります。
2004年に改正された標準管理規約第32条第15項「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」が、新たに管理組合の業務に追加されました。また、同管理規約第27条関係のコメントによると「コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。」と記されています。すなわち、大規模修繕工事は、居住者間のコミュニティ形成づくりにも役立つと考えられています。
公平・公正・公開の原則を基に、情報の開示と透明性を確保し、プロセス(手順)を踏んで大規模修繕工事を進めることが求められています。管理組合が必要に応じて総会を開催し、区分所有法や管理規約に則り、適切な手順で区分所有者の合意形成を諮っていくことを忘れてはいけません。
大規模修繕工事では、どのような工事方式を選択するかで、工事の内容や請負業者選定、竣工後のアフターサービス(保証期間)が違ってきます。例えば、コンサルタント(1級建築士等)を活用した「設計監理方式」は設計監理と施工が分離され、仕様書の作成、請負業者選定の助言、現場監理から完成後の点検等すべての段階において第三者によるチェックがなされることで、一定の品質が期待できます。「責任施工方式」は準備段階で、調査・診断を含めて複数の業者に工事の具体内容を提案してもらい、ヒアリング後に1社に選定するものです。請負業者がハード(施工)とソフト(計画・設計・監理)の両方を担当する方式です。
マンションの大規模修繕工事を施工する請負業者が内定したら、管理組合の総会で承認のうえ、請負契約を交わし、マンション住民への工事説明会の開催、その後工事が始まったら、打ち合せの会合(工程会議)で工事進捗状況の確認、工事が完了したら管理組合の検査、竣工図書の引き渡し、長期修繕計画の見直し、工事終了後の1年点検等々、関係する作業が引き続き残ります。
マンションを計画的管理するうえで非常に重要になる資料が修繕履歴情報です。「大規模修繕工事をどのように進めて行ったのか」「理事会や修繕委員会はどういう役割分担をしていたのか」「請負業者は、どのような経緯で決定したのか」「費用はいくらかかったのか」等々の記録を残すことは、次の大規模修繕工事を計画する時、非常に役立つ情報になります。また、通常のマンション設備等の点検記録や過去の修繕記録も履歴情報として残し、閲覧できるように保管していくことが、マンションの適正な管理につながります。
(大規模修繕工事新聞 第11号)