560戸のビッグコミュニティー
住民協力でタイトな工程も順調に
560戸の郊外型大規模マンション。住居棟のほか、管理棟、集会室やキッズルーム、防音スタジオ、ライブラリー、ゲストルームがある棟、充足率100%の自走式駐車場などがあり、敷地面積は2万4,000㎡を超える。
こうしたビッグコミュニティーだからこそ、住民の生活にかかる工事中の負担(足場や養生シートによる圧迫感、騒音や粉塵等)に配慮するため、「なるべく短い工程管理の作成に努め、それが採用されました」と現場代理人の妹尾博文さん。
ただし、現場代理人の苦労はこれから。作成した工程、工事期間を守らなければならないからだ。
実は、工事前のアンケートの回答率は40%台、住民説明会の集まりも少なく、「住民は大規模修繕工事に関心が少ないのでは…という感じだった」と妹尾・現場代理人。
しかし、駐車区画の移動など、お願いすればすぐに対応してくれたり、工事中の大きな指摘や要望も少なく、こうした住民の対応のおかげで、「タイトな工程も順調に進んだといえます」と話す。
駐車区画の移動については、560世帯に対して560区画という、充足率100%の自走式駐車場ではあるが、空き区画が約80台あった。これを有効活用するため車を移動してもらって空きスペースをつくり、作業員休憩所・資材倉庫、さらには工事車両置き場として使用することができた。
さらにマンションの立地環境では材料の搬入経路の確保が難しく、1階住戸の専用庭に搬入のための足場を設置する方法を採用した。隣の住戸との専用庭を隔てる扉を開放する必要があり、1戸でも反対されると足場の設置もできない環境であったが、これについても住民の反対はひとつもなく、スムーズに作業が進んだ。
工事がはじまって約1カ月後、小学生以下の子どもを対象とした工事説明会を実施。集会室で資料を配布して「なぜ工事するのか?」「どんな工事を行っているか」等を説明した。
そのあと、実際に工事現場を回って、足場を組み立てている途中の現場や実際に外壁補修などをはじめている部位を見学。
危険な場所や入ってはいけない場所、触ってはいけないところを見てもらった。子ども向け説明会は約30人、親を含めて50人以上が参加した。
さらに妹尾・現場代理人は、管理会社が監理者として入ると、工事監理担当社員だけでなく、フロントマンや管理員も協力的であるというメリットがあると話す。
もっとも、日常管理で建物をみている管理会社は不具合個所や、住民の生活動線を把握している管理会社スタッフの協力は不可欠といえよう。
(大規模修繕工事新聞 第71号)