○管理組合は保険会社や保険商品を選べないの?
○対象工事は大規模修繕で、発注者が管理組合なのに、どうして施工業者が保険料を払うの?
○施工業者が保険料を払うとしても、工事代金に含まれてしまえば、結果的に管理組合が支払うことになるのでは?
大規模修繕工事かし保険が今ひとつ理解できないという管理組合は少なくありませんね。
それが前述した3つの疑問にあらわれているのではないでしょうか。
大規模修繕工事の発注者は管理組合であるものの、事業者登録や保険加入の手続き、保険金支払いなど、保険法人とやりとりするのはすべて施工業者なのです。
それなのに保険法人やその保険代理店が、大規模修繕工事かし保険の理解を管理組合に求めて、管理組合対象の各種セミナーや管理組合団体の集会などに説明に来ます。
この保険は任意であるため、発注者である管理組合の理解があってはじめて施工業者の保険加入の広がりにつながるからです。
しかし、管理組合との関わりが不明確であることに変わりはありません。
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この理由に、住宅瑕疵担保履行法の最初の対象が「新築住宅」であり、また新築住宅を買い主に引き渡す「建設者」や「宅建業者」であったことによると考えられます。
新築住宅、特に分譲マンションでは「建設業者」「宅建業者」が瑕疵担保責任を履行することになるため、彼らが保険契約の対象者となります。
当然、建設後に入居する区分所有者や設立する管理組合は存在すらしていません。
ただ、入居して瑕疵がわかり、建設会社に訴えたところ、保険に加入していた建設会社が保険を使って瑕疵を修復する、という流れはわかりやすいといえます。
問題は、これが大規模修繕工事にも当てはまるのかということです。
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わかりにくさの原因は、新築住宅のフローをそのまま既存マンションの大規模修繕工事かし保険にスライドしたことにあるのではないでしょうか。
大規模修繕工事の保険契約対象者を新築同様、「業者」としてしまったため、発注者である管理組合が「蚊帳の外」に置かれた形になってしまいました。
保険料がどこにかかるのか、だれが払うのかという問題は、各工事で保険料が発生するため、施工業者としては各工事の請負金額に含めたいというのが本音です。
つまり管理組合への工事見積金額に保険料を計上するケース、会社の方針で保険加入しますと言って見積もり金額に組み込まないケース、サービスですと言いつつも見積もり金額に含んでしまうケース…
施工業者または物件によって対応はさまざまです。
管理組合としては、施工業者がどの保険法人に登録しているか、その保険法人の大規模修繕工事かし保険の補償内容、検査の実績などを知っておくことが大事です。
管理組合としてできることはまず「知る」こと、情報を得ること。
そして検討したことを記録に残すことが第一です。施工業者が大規模修繕工事かし保険に加入しない工事を発注するか、保険加入の場合はだれが保険料を払うことになるのか、そうした経緯と理由などの検討過程がわかるようにしておけば、後々の対応がスムーズになると考えられます。
(大規模修繕工事新聞 第24号)2011-12