マンションコミュニティ研究会(廣田信子代表)は11月24日、東京・下北沢の北沢タウンホール大ホールで「コミュニティがマンションの価値を決める!」と題し、第4回フォーラムを行った。
このページでは第1部パネルトークの中から、篠原みち子弁護士の講演「人間関係トラブルを抱える管理組合とうまく運営している管理組合の事例」を取り上げる。
● 総会でのやり取りが原因で感情的なしこりが生じ、理事会のやり方にことごとく反対するケース
過去の理事会のやったことをすべてもう一回決議をしてひっくり返す。そういうことをやっている管理組合でした。
これはリゾートマンションで、共用施設の脱衣所にトイレがない。だからトイレを作ってほしいという声があったので200
万円近くかけてトイレを作ったんですけれども、次の理事会でそのトイレを壊したいと。ようは前の理事会がやったことはすべて気に入らないのです。
それで前の決議をひっくり返すためのは何分の1の決議があればいいのかということで相談に来たんです。「そんな無駄なことを」と言ったんですけれども、やはり200万円近くかけてトイレをつぶしてしまった。取り壊したとそういうケースです。
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2つ目ですが、これは裁判になりました。
建替え推進に関する決議だったんですけれども、最初は建替えの推進派として積極的に行動していたし、理事会にも協力的だった区分所有者C。ある日から突然、総会の決議、理事会のやることすべてに反対するようになって、ことごとく内容証明郵便を送りつけ、その上で総会決議無効確認と管理者解任訴訟を提起しました。
裁判は控訴した高裁でもやはり棄却されました。
区分所有者Cが強い行動に出たのも理由がないわけではなくて、私が見る限り、建替え推進の進め方ですね、それがかなり拙速で、ラフな計画だったんです。もう少し丁寧にやればこうはならなかったのかなという気がしております。
●会社での人間関係をそのままマンションに持ち込むケース
ある業者が分譲したマンション、分譲会社の社員や偉い方がたまたまたくさん住んでいたんですね。
元役員をやった方が理事長をしている状況が比較的長く続いたマンションなんですが、現役時代にその役員と相当の確執があったらしいKさんが理事会の方針にことごとく反対をいたします。管理費等は、自分名義の口座にプールしているから取りに来いといって、自分から払おうとしません。
管理組合のほうでは裁判を起こしました。この方の風貌はきちっとした英国紳士風の方です。そういうことから裁判長も「判決ではなく、話し合いで払ってもらえるよう一生懸命本人を説得しました」と、「会社でそれなりのお立場だったんでしょう。
どういう事情でこういうことをしてお支払いにならないのか教えてください」というようなこともいろいろ言ったようです。
管理組合が勝訴し強制執行するかどうかにもなったんですが、逆にそんなことをやっているうちに、その人から理事長に対し名誉棄損の損害賠償の訴訟が起こされました。
議案書にこの人が支払わないからこの人の部屋番号と氏名を書いてしまえば、それが理由で払ってくるかもしれないという気持ちと、あの野郎書いてやれという気持ちがない混ぜになっていたかと思うんですけど、そういう風に書いてあることが名誉棄損だということで訴訟を起こされました。
Kさんの請求は棄却になりましたが、その後の管理費もまた払わなくなりました。2回目の訴訟を準備していたところ、裁判所の判断は同じだろう思ったのか任意に払うようになったんですが、自動引き落としの手続きは絶対とらない。必ず振り込みをする。こういう状況です。
700戸弱の団地で、うち店舗が20区画。この店舗に分譲当初から総会で暴言を吐いたり、理由もないのに自治会長を訴える等の問題行動を起こす人がいました。
このような人物に理事会を牛耳られては困るという共通認識が生まれ、それがよい面での結束につながったようです。
自分たちの団地に今度こういう花を植えたいだとか、この木がこんなに大きくなったよだとか、そういうことを非常に楽し
んだり、笑いにしたりしています。
で、自分たちのマンションを良くすることが役員の役目なんだという気持ちを強く持っていますし、団地に愛着を持っているのが話をして感じられる。非常に気持ちがいいんですね。
今の理事長さん、副理事長さんたちが若い役員を引き込んで、いずれ理事長等になってもらうんだと積極的に声をかけて、理事会や委員会の中に引き込んでいる状況があります。
古い言い方ですが、「お互い様」という言葉を思い出して、大切にしていかなければならないんだなと思います。
管理組合の内部においてもそうなんですけれども、意見とか考え、好み、生活スタイル、立場、あらゆるものが違うわけです。
でもお互いへの気遣いっていうのかな、そういうことが管理組合内部の役員と区分所有者、そういうことが少しずつ良くするカギになるのかなと思います。
(大規模修繕工事新聞 第25号)2012-01