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専有リフォーム最新事例 限られたスペースをより快適に マンションリフォームのポイントを探る

 

突然のリフォーム通知に不安を感じるのだが・・・

 ある日、管理員に渡された管理組合からの通知文に、階上住戸で3日後からリフォーム工事を行うのでご承知下さいという内容が書かれてあった。書面は工事をする部屋番号と管理組合名、ありふれたあいさつ文のみで、どんなリフォームが行われるのか何もわからない。工事後に苦情をいわなければならない生活になったらどうしようかと不安に感じている。

 

マンションの築年数が増すと、購入当時のお部屋と現在の生活環境を比べて、内装や水回り設備の老朽化、利便性の悪さ、古びたデザイン性などを何とかしたいと願う人も増えてきます。『大規模修繕工事新聞』の読者からも、「専有部分のリフォーム事例を載せて欲しい」「模様替えの特集を組んで欲しい」など、専有リフォームに関する記事掲載の要望が多くあります。

そこで、今号ではいくつかの事例を 取り上げ、リフォームへの関心を高めたり、管理組合への届出の必要性など を理解してもらいたいと思います。

 

専有部分でも管理組合の関与は大切

前記のリフォーム工事は、着工後にリビング、ダイニング、キッチンの床のフローリングを中心とした内容だったことがわかった。フローリング工事の場合は特に音の問題に関するトラブルを起こしやすい。マンションのルールや共同住宅の構造を知らないリフォーム業者が請け負い、その業者の思いのまま工事が進んでしまうと他住戸へ影響する危険は大きい。つまり、トラブルになる可能性があり、トラブル対策もないということになる。

マンションリフォームが一般住宅のリフォームとどこが大きく違うかといえば、マンションは「区分所有建物」だという点。完全に独立した住宅ではなく、共用部分と専有部分とから建物ができていて、共用部分は勝手にいじってはいけないし、他の住戸の利益を損ねるようなこともしてはいけない。

共用部分や周辺住戸への影響の可能性がある以上は、どんな工事をするのか、管理組合が関与してチェックすることは大切だ。マンションに慣れている業者なら、管理組合が承認しやすいように、管理組合への手続きや対応もアドバイスしてくれる。こうした手続きは、リフォーム会社にとっても起こりうるトラブルの防止策であるのだから、マンションを数多く手がけるリフォーム会社なら熟知していて当然のはずなのだ。

 

■マンション概要
築15年・100戸
専有面積80㎡
■主なリフォーム
玄関と廊下を中心にトイレの交換、クロスの張り替えなど
■費用
約215万円
■工期
約2週間

広がりの演出に機能性、デザイン性をプラス

玄関にあふれ出した靴や傘。狭いトイレのスペース。調和しないカーペットの色と壁の色。こうした点を改善しようと計画を始めたのが今回のリフォームのきっかけだった。
玄関は、天井まで高さのある収納を設置。室内への扉には鏡をつけて、広がりや奥行き感をみせた。さらに扉には、健康建材の「エコカラットタイル」を採用。ニオイや有害化学物質を吸い取り、湿度をコントロールする機能的な建材で、壁材としても使用されている。デザイン性もあり、「今までと雰囲気を変えたかった」というオーナーも満足の仕上がりだ。
トイレは、タンクレスを採用。タンクを取り除いた分、スペースが広くなり、動作がしやすくなった。また、従来はタンクの下の掃除が大変だったが、タンクをなくし、さらにタイル張りにしたので、掃除の手間も楽になった。
色合いについては、壁紙は同じベージュ系100種から選んだ。当初の計画にはなかったが、計画を練るうちに、洗面化粧台も大判タイルで高級感を出し、キッチンにも収納や照明を取り付けるなど、リフォーム範囲も広がった。

玄関は、天井までの収納を設置。奥の扉に鏡をつけて広がりを演出し、さらに健康建材「エコカラットタイル」を使用して、機能性・デザイン性も強調
 
 タンクをなくしたトイレで動きやすくなった。床もタイルを使用
タンクレストイレとなったため、新たに洗面台を設置した
 
洗面化粧台の床は大判タイルで高級感を出してる
 
キッチンにも収納を設置。照明は蛍光灯からスポットライト式に変更

■マンション概要
築35年・450戸
専有面積74㎡
■主なリフォーム
4DKから2LDKへの間取り変更、キッチンや浴室等水回り設備の全面交換、全室フローリング
■費用
約850万円

 

共用部分の工事に合わせた室内リフォーム

 

数年前から排水管からの漏水事故があり、抜管調査をしたところ、管の肉厚が薄くなって穴が空いている個所がみられたため、雑排水管と汚水管の交換工事を計画。管理組合では共用部分のほか、専有部分についても管理組合負担で交換工事を実施することを決めた。

室内の壁や床をはがして配管の交換作業をする場合、「どうせはがすなら」と室内リフォームを希望する住戸は少なくない。解体作業などの費用が管理組合の負担であれば、その分、専有リフォームにかける金額が割安になるからだ。ひとつの住戸が単独でリフォームを行うと、床をはがすところから費用が発生することになる。

このため、工事を請け負う会社がユニットバスやトイレ・洗面台・キッチンの交換などを手がけることも多い。今回は、管理組合から施工を請け負った管理会社が一住戸を外部に住む区分所有者から借り、間取り変更を含め、全面にリフォーム。マンション住民にリフォームのモデルルームとして、公開している。

 

マンション内に体感用モデルルーム設置

 

 モデルルームのコンセプトは、家族構成の変化に対応する間取り変更。 4DKだった住戸を、子どもが独立して夫婦2人家族の生活になったために 2LDKに模様替えする。

 夫婦が高齢になることを考えて和室をなくして段差を解消。廊下 もキッチンもフローリングにして、居室には置き畳を敷いた。北側の2部屋の間仕切り壁を取り払い、布団の上げ下げのいらないベッドルームに。広くなった部屋の一部をクローゼットにした。南側も仕切り壁を取り、暗かった部屋を明るくした。

キッチン、浴室、トイレ、洗面についても、すべて新商品に交換した。実際のリフォームをイメージし、体験できるモデルルーム。カタログやショールームでは味わえないことから、住民の見学者が後を絶たない。

 

難しい判断は専門家の活用を

管理組合が関与するリフォーム工事の申請・承認体制の流れを表した。ただし、一般的なマンションでこうした一連の仕組みが出来上がっている管理組合は多くない。しかし、前記したように申請・承認等の手続きの理由はトラブル防止策であるから、国土交通省が発表している標準管理規約や使用細則モデルなどを参考に、申請や承認の書式等を作成しておくと、今後、リフォームは行いやすくなるだろう。
 管理組合規定のガイドラインとは、例えばフローリングの床材の遮音性能を「LL-45値以上」などと定めておくこと。規定があると、騒音で問題になったときには、それが守られているかどうか、問題解決へのひとつの基準を設けることができるわけだ。施工にしても床下の太鼓現象を妨げる工夫など、戸建てと違って配慮することが多い。そういったことがガイドラインで示せれば、後のトラブル対策になる。
 ガイドライン作成については、建築士などのコンサルタントを活用したい。管理組合では難しい判断も専門家にみてもらうと、理事会の負担も軽くなるといえよう。面倒な手続きでもしっかり行えば、だれにとっても好ましいリフォームとなる。

(大規模修繕工事新聞 第87号)