全国建物調査診断センターは3月25日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第33回セミナーを開きました。ここでは㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「コンサルタント会社選定時に考慮するべき事項①~⑥」から後半部分を掲載します。<構成:編集部>
コンサルタント会社選定時に考慮するべき事項
①会社としての形態がある
②法令上の申請登録がある
③技術力がある
④実績がある
⑤会社の経営が健全状態である
⑥会社の規模がある程度ある
会場の参加者との質疑応答や意見交換 「コンサル」「自治会」「高齢化」etc.
☆④実績がある
コンサルタント会社選定時に考慮するべき事項の4点目。その会社がマンションの大規模修繕工事の建築事務所として実績があるかということです。
大規模修繕工事は新築工事と異なる体制、安全管理、仮設設置の条件や対応のノウハウが重要視されます。
実際に住んでいる方々のストレスは仮設です。建物を足場で囲む、これが数カ月続く、その中でみなさん生活するということになります。想像はできるんですけれども、実体験が伴わないので、どういうことが起こるのかものすごく不安があります。
この不安をそのままにして工事に入ると、一番のクレームの原因になりやすい。
実績があるコンサルタント会社は経験上、成功も失敗も多数あるということです。その積み重ねからフィードバックされるノウハウは重要であり、管理組合に供されるメリットも大きいものがあります。
☆⑤会社の経営が健全状態である
5つめは当たり前の話になりますが、会社が経営健全状態であること。建築士事務所やマンション管理事務所は、その特質から、労務経費が一般管理費の主要な大部分を占めるため、大きな利益を計上しにくいビジネスモデルであります。
俯瞰からみては長年にわたり安定的に事業を継続していること、直近においては右肩下がりのトレンドがないこと等の最低限のハードルとした方がよいコンサルタント会社選定に広がると思います。
また、この機械があれば生産性が上がるとか、利益が向上するといったビジネスモデルでもありません。
設備投資をするとなれば人に対するものに尽きます。優秀な人をどう採用するか、その人たちを社員としていてもらうために投資をすることになります。
配置される従業員のモチベーション高くあることで、みなさま方に有益なサービスを提供できる環境が整う…こうした側面があることをお忘れないようにしていただきたいと思います。
☆⑥会社の規模がある程度ある
前述した①~⑤を具現化し、コンサルタント会社の選択し、契約し、その上で自分たちの管理組合にいかにしてメリットをもたらしてもらうか…そう考えるとある一定の分母が必要であるといえるでしょう。
つまりコンサルタント会社にもある程度の会社規模があることが好ましい場合があります。特に大戸数、超高層タワー、店舗と住宅が混在しているような再開発物件等、構造や規模が特殊なものはそうした配慮がほしいといえます。
(大規模修繕工事新聞 No.103)
コンサルタント会社選定時の分析の一例
~会社と従業員を聞き取り等で分析する
(1)特に技術者の離職率が低い会社であるかどうか
⇒蓄積された会社の実績が各従業員技術者へ水平展開して共有化して教育されている環境が整っている
(2)会社の方向性がはっきりしているか
⇒改修工事独特の技術力やノウハウの築盛のためにも改修に特化するか、新築もするのか、あいまいでは教育も充実しない
(3)会社の組織としての担当者従業員を指導管理する上席や部署が重層的に存在しているか
⇒担当者従業員を孤立させない仕組みが恒常的にあることにより担当者知識を超えるスキルのフィードバックが期待できる
(4)担当者従業員は愛社精神のある人か
⇒組織の一員、会社の一員としての自覚が最後の責任感につながる
(5)ある程度の従業員数と規模のある会社か
⇒一定割合の分布を考慮すると分母は必要である