最大手のマンション管理会社の元社員が管理組合の管理費等を不正に引き出し、横領していたなどとして昨年12月、国 土交通省中部地方整備局に同社の名古屋支店が管轄する愛知、岐阜、三重、静岡の4県で業務停止命令の処分を受けました。 こうした事案はなかなかなくなりません。「現金事故を防ぐポイント」と題して、その一例を紹介するシリーズです 〈協力:双日総合管理㈱ 難波純一〉
<事故事例8>
管理員が現場で発生する現金に手を付けた例。
駐車場使用料等の契約書を区分所有者から取得後、当該契約書 を破棄。会社に報告しないで使用料を着服した。また会社指定ま たは管理組合指定の領収書を使用せず、市販の領収書を使用して いた。
フロント担当社員は空き駐車場の募集を掲示板に掲示しなかっ た。このため、マンション会計部で作成している「駐車場・駐輪 場稼働台帳」と、管理員が独自に作成していた「駐車場・駐輪場 稼働台帳」と、その実際の利用状況を照合しないことが通用し、 覚知も遅れてしまった。
<再発防止策>
①空き駐車場募集を掲示板に掲示する。
②管理員が市販の領収書を使用できなくするために、現場で「領 収書」等を発行する場合には、現金の取り扱いルールおよび会 社または管理組合指定の「領収書」を管理組合委員に周知する。
③管理会社のマンション会計部は、駐車場・駐輪場使用料等の口 座引き落としの原始証憑(しょうひょう・申込書、契約書等) を記録保管し、それから「駐車場・駐輪場稼働台帳」を作成する。 管理員は「駐車場・駐輪場利用状況表」を作成する。管理員に よる無断貸し出しを防止するため、フロント担当社員は「駐車 場・駐輪場稼働台帳」と「駐車場・駐輪場利用状況表」を照合 したうえで、実際の利用状況を確認する。
<事故事例9>
管理員が、駐車場や集会室等の施設利用者から受領した現金を 会社に報告しないで着服した。管理会社指定または管理組合指定 の領収書はあるが、連番管理・複写式としていないため、管理員が勝手に使用できる状況にあった。
<再発防止策>
①管理員が市販の領収書を使用できなくするために、現場で「領 収書」等を発行する場合には、現金の取り扱いルールおよび会 社または管理組合指定の「領収書」を管理組合委員に周知する。
②管理事務室で使用料等の現金を受領する場合には、管理員が「領 収書」(連番管理・複写式等)を発行し、現金入金明細書に記 録する。
③フロント担当社員が現金を回収する場合は、現金、領収書(控)、 現金入金明細書を照合したうえで、回収を記録する。
<事故事例10>
駐輪場シールの使用と残枚数を台帳等で管理していないため、 管理員が駐輪場シールと引き換えに使用料として現金を受領し、 着服していた。
管理会社指定または管理組合指定の「領収書」(連番管理・複 写式等)はあるが、それを使用しないで、市販の領収書を使用し ていた。
<再発防止策>
①管理員が市販の領収書を使用できなくするために、現場で「領 収書」等を発行する場合には、現金の取り扱いルールおよび会 社または管理組合指定の「領収書」を管理組合委員に周知する。
②管理事務室で使用料等の現金を受領する場合には、管理員が「領 収書」(連番管理・複写式等)を発行し、現金入金明細書に記 録する。
③フロント担当社員は、管理員が記録した「駐輪シール管理台帳」 の記録と残枚数を確認する
(大規模修繕工事新聞 111号)