全建センター オンラインサービス 「AI長期修繕計画見直し制度」をスタート
全建センターではこのたび、公私混同のない、完全中立な「マンションAI」が手がける「AI長期修繕計画見直し制度」をスタートさせました。
今年3月以降、管理会社、設計コンサルタント、施工会社による談合問題が社会的な問題となっています。
管理会社や設計コンサルタントに依頼せず、5年毎に長期修繕計画を見直し、役員の入れ替えがあっても計画の引き継ぎができるようにすることが必要です。
そこで、全建センターは中立的で客観的な長計の見直しができるよう、全建センターのマンションAI」を使った5年ごとの長期修繕計画の見直しサービス「AI長期修繕計画見直し制度」がお役に立てることと思います。
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長期修繕計画見直し相談室
//zenken-center.com/tyoki-sodan/
第77回管理組合オンライン・セミナー採録 区分所有法改正に伴うマンション標準管理規約の見直し
-主な改正事項のポイント-
令和7年標準管理規約(単棟型)改正案パブリックコメント用公表資料より
一般社団法人全国建物調査診断センターが10月26日に配信開始した第77回管理組合オンライン・セミナーの要約を採録します。今回は第77回第2部の「区分所有法改正に伴うマンション標準管理規約の見直し-主な改正事項のポイント-」です。
視聴動画は下記URLよりVimeoとYouTubeで公開しています。
//zenken-center.com/77sem1026/
標準管理規約は10月17日、公表されました。詳しくは次ページをご確認ください。
本セミナーのスライド作成日は10月9日だったため、パブリックコメント用公表資料を使用しましたが、本ページでは17日公表後の条文を参考に修正しています。
それでは、標準管理規約単棟型の主な改正ポイントをみていきましょう。条文の数字が前後しますが、国土交通省の資料に記載された順番で行います。
■総会決議における多数決要件の見直し①
まず、第47条1項で、総会の定足数を議決権総数の「半数以上」から「過半数」となりました。これは区分所有法で定足数の規定「過半数」が新設されたため、それに合わせたものです。
3項の「組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し」、これは、前はありませんでした。要するに、特別決議においても、定足数ができたということです。特別決議を採決する際、まず組合員総数の過半数が出席して、「出席組合員及びその議決権の各4分の3以上で決する」となったわけです。
簡単にいうと、議決権が一律の100戸のマンションで、普通決議は51人以上出席して、26人以上の賛成があれば可決。これは今までと変わりません。
特別決議は、51人以上が出席して、その4分の3というと、38.25、つまり100人中39人の賛成で可決することになります。
これまでは100人の4分の3、つまり75人以上の賛成がなくてはならなかった、例えば管理規約の改正などの特別決議が、39人の賛成で可決できるようになるわけです。
先にも述べましたが、これは区分所有法の規定が優先されるので、来年の4月1日以降は、規約改正などの特別決議がとても楽になるということになります。
ここは、法律の強行規定なので、それぞれの管理規約を来年の4月1日以降は、どのマンションでも有効になると思ってください。
■総会決議における多数決要件の見直し②
47条4項は新設されたものになります。
この4項は、特別決議は4分の3が原則だったところ、出席組合員及び議決権の各3分の2以上で決する特別決議を新しく作ったということになります。
条文を要約すると、第一号イ「共用部分の保存に瑕疵の除去に関するもの」、ロ「バリアフリー化」、第二号「共用部分の変更に伴う専有部分の保存行為」、第三号「大規模滅失の復旧における共用部分の変更決議」ということになります。
第一号イは、例えば外壁タイルが剥がれそうになっているというような建物の瑕疵があって、それを直すのに躯体を壊さないといけないような、共用部分の重大変更に当たるようなものでも、3分の2の多数決要件でいいよ、ということです。
また、ここにある「他人」は、第三者だけではなく、マンション住民も含むと考えられます。
ロの「バリアフリー化」はそもそも躯体をいじらなければ普通決議でよいのですが、やはり重大変更が生じる場合は4分の3が必要でした。それを3分の2でよいという形で緩和されたというのがロということになります。
また、階段室部分を改造して、建物の外壁に新たにエレベーターを設置する工事は、もともと共用部分の重大変更として、4分の3以上が必要でしたが、3分の2以上の賛成により実施可能となりました。
第二号の「共用部分の変更に伴う専有部分の保存行為」とは、3項三号にある、「共用部分の変更に伴って必要となる専用部分の保存行為等」で、マンションの共用部分を工事する際、その工事に付随して、各区分所有者の専有部分に行う必要がある、最小限の維持・保全のための行為を指します。
三号は、建物の各の2分の1を超える部分が滅出した場合、いわゆる大規模滅失の復旧について、4分の3決議が3分の2に軽減されました。
なお、総会の定足数は特別決議の事項と同じく、「組合員総数」「議決権総数」の過半数が必要となります。
■総会決議における多数決要件の見直し③
47条5項、6項は、客観的な事由が認められる場合のマンション再生決議、建替え・更新・売却・除却等の多数決要件
5分の4以上を、4分の3以上に緩和するというものです。
客観的な事由とは、以下の区分所有法第62条第2項を指します。
| ①地震に対する安全性が建築基準法等の基準に適合していないとき ②火災に対する安全性が建築基準法等の基準に適合していないとき ③外壁、外装材等の部分が剥離し、落下するおそれがある基準に該当するとき ④給排水等の配管設備の損傷、腐食等により衛生上有害となる恐れがある基準に該当するとき ⑤バリアフリー法等の基準に適合していないとき |
以上の5つは、本来必要な「5分の4以上」の多数決要件を「4分の3以上」に緩和できるようになるわけです。
また、これまで「建替え決議」だけだった規定に、建物更新決議、取壊し決議が新しく追加されました。
さらにマンション再生では「建物更新」という用語が新たに組み込まれています。これは、いわゆる「一棟リノベーション」を指します。
「一棟リノベーション」とは、建物の構造を存続させながら、スケルトン状態、つまり内部の床や壁、天井、配管、空調設備などすべて撤去し、コンクリートや鉄骨の骨組みだけにして、専有部分と共用部分の両方を再生させる手法です。
すべてを解体して建物を再建する建替えと比べ、既存の骨組みを生かしながら建物を再生する一棟リノベーションが今後、選択肢として採用されるのか注目されます。
6項は、マンション再生等に係る決議のうち、建物敷地売却決議又は建物取壊し敷地売却決議の規定で、5項と同じく、①~⑤の多数決要件を「4分の3以上」に緩和できるものとなっています。建替えは無理そうだから、建物と敷地を一気に売却しようという制度です。
建替えが思うように進まない現状から、区分所有法改正の目的の本丸がここにあると言われています。
■総会招集時の通知事項等の見直し
第43条は、総会招集時の通知事項において、議案の要領が新しく追加されたものになります。
これまでの標準管理規約では、総会招集時の通知において、総会の目的が①規約の変更等、②共用部分の重大変更、③大規模滅失の復旧、④ 建替えまたは敷地売却の決議である場合に限り、議案の内容を組合員に通知することとなっていました。
新標準管理規約では上記①~④にかかわらず、すべての事項について議案の要領を通知しなければならなくなります。
例えば、役員の選任について、いままでは議案書に「役員の選任」といった議題だけでよかったのですが、これからは、今期の役員は101号室Aさん、201号室Bさん等々と、議題とその内容も書かないとダメ、ということになるということです。
総会の議案書は管理会社が作っているから安心だと思われるかもしれませんし、これまでも全議案について議案の要領を記載しているので大丈夫、という管理組合が多いかと思います。
ただ、法律が変わって、全議案に対して議案の要領を記載しなければ行けなくなったということだけは認識しておいてください。
これまで意識していなかった総会議案書も、今一度確認してみてはいかがしょうか。
※つづきは、VimeoまたはYouTubeでご覧になれます。
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令和7年度「マンションストック長寿命化等モデル事業」成果報告会 全建センター・足立筆頭理事が「マンション第二多摩川苑」を報告

当該物件の現状と課題
まず自主管理マンションですが、総会の出席率が低く、出席者も固定化し、役員の成り手不足の状態です。
平成13年に大規模修繕工事を実施しているんですが、それ以降、大規模修繕工事は行われていません。いわゆる事後保全という形で何か問題が起きたら手当てしていくという形で補修していた、という状況であります。
建物は旧耐震基準で、平成24年に一次診断を実施し、結果は耐震不足でした。そのため、二次診断を実施の上、耐震改修工事を実施していく必要があります。
長期修繕計画は分譲当初からなく、今回の大規模修繕工事や耐震改修工事等の計画を実施するためにも長期修繕計画の策定は必須であります。
あとは用途地域の変更があり、商業地域(容積率制限なし、建ぺい率70%)から近隣商業地域(容積率300%、建ぺい率80%)への変更に伴い、現状の容積率(約470%)は既存不適格となってしまっています。
このため、建て替えは現実的ではないということで選択肢から排除しているので、きちんと維持管理して長寿命化を図っている必要があります。
課題に対するこれまでの取り組み
令和3年、川崎市がマンション管理適正化推進計画を策定し、管理組合に接触、ヒアリング等を行っています。
この川崎市の計画に基づき、要改善マンション(管理上の問題があり、「助言・指導・勧告を行う判断基準の目安」に該当するマンション)支援として、いわゆるアウトリーチ型のアドバイザー派遣を受けることになりました。
この川崎市アドバイザーからの助言を踏まえて、令和5年7月に耐震診断の二次診断に着手しまして、併せて長期修繕計画の策定に向けて勉強会や情報収集等をはじめます。
令和6年2月、川崎市が理事会に「マンションストック長寿命化等モデル事業」の説明を行い、管理組合として申請を目指すことを確認します。
翌月、管理組合、川崎市、我々全建センターの3者でマンションストック長寿命化等モデル事業を目指すためのキックオフミミーティングを実施しまして、ここからプロジェクトがスタートしていくことになります。
本事業における提案の概要
事業をはじめるにあたり、まず建物劣化状況調査を行いました。
耐震と各設備(給排水衛生設備・機械設備・消防設備・電気設備・昇降機設備・ガス設備等)の一次・二次調査診断です。
建物の劣化状況や耐震診断結果等を踏まえ、部位ごとに修繕・修復・検討するなど、マンションの状況に応じて将来の維持管理コストの圧縮を図ることも考慮した長期修繕計画を策定しました。
今回は修繕積立金の大幅な増額が必須となり、その合意形成につきましては困難を極めました。最終的に総会決議が取れましたが、理事長はじめ役員様方の献身的なご対応があり、住民説明会を2度開催して何とか値上げに成功しました。
それからは、速やかに大規模修繕工事を実施する必要があります。現在は目標時期として、2026年内の工事竣工を目指すということで、やっております。
納品した成果物
建築部門一次調査診断報告書(①-2)
意匠的な建築は一次診断でとどめました。外装、防水など一般的な調査をしました。結果は大規模修繕工事を23年も行っていないので、結果は非常に悪かったです。
設備部門二次調査診断報告書(②-2
給排水設備は二次診断も行いまして、幸い排水管は耐火二層管を使用しておりましたので、計画修繕の必要はないという判断でした。
給水管は白ガス管なので、必ず更新の必要がありますが、水漏れ事故が起きていません。資金的にかなり切迫した状況になっているので、長期修繕計画では2035年に実施予定としました。
長期修繕計画書(③-2)
納入した長期修繕計画書ですが、修繕積立金の残高について、今年から来年にかけて計画する大規模修繕工事が、まずできませせん。資金がないので、ここはもう、住宅支援金融機構から借入を行うことで解決させますが、ここで借入を行ったとしても、後に出てくる耐震改修や、給排水設備など工事はどんどん続いていきますので、現状の修繕積立金で賄えるわけがないということがわかります。
私どもが提案した修繕積立金の値上げ案ですが、現在は㎡当たり208円。2026年から430円に上げてはどうでしょうかということで提案させていただきました。
多少マイナスになる年度もあるのですが、最終的には黒字に転じますし、この辺が現実的なところじゃないのかなという提案です。

全建センター 足立筆頭理事
| マンション第二多摩川苑 【 改修・管理適正化計画支援】 ・自主管理による管理不全マンションの建物状況調査、長期修繕計画の策定、大規模修繕等の工事計画・資金計画の検討 【建物概要】 ・神奈川県川崎市中原区 ・1975年3月竣工・SRC造・地上7階塔屋2階建て・41戸 ・自主管理 |


まとめ及び本日までの進捗状況
建築調査診断につきましては、とにかく劣化状況が悪いということがわかりましたので、大規模修繕工事に即時着手することが決定しています。
設備配管に関しては後ろに回す。耐震工事も後回しにするという形で、まずは大規模修繕工事を行うということで合意をいたしました。
長期修繕計画についてですが、430円の値上げについて理事会で検討したところ、あまり現実的ではないということで、段階的に値上げをしていくことで決まりました。
なので、今回2026年からは360円とすることが5月の通常総会で確定しました。
現在の進捗状況は、大規模修繕工事の設計を終え、競争入札による業者選定を実施し、先月施工業者との契約が済みまして、これから着工に向かう流れとなっております。

改正マンション標準管理規約を公表 各マンション管理規約も見直しが必要です!

国土交通省は10月17日、令和7年マンション関係法改正の施行に向け、マンション管理規約のひな型となる改正マンション標準管理規約を公表しました。
国土交通省では法改正に伴う標準管理規約改正について、「総会の開催手続きや決議要件等の管理組合の運営上重要な内容が含まれているため、各マンションの管理規約も見直しが必要になる」としています。
【改正の概要】
○令和7年マンション関係法(区分所有法)改正関係
・総会決議における多数決要件の見直し
・総会招集時の通知事項等の見直し
・所在等不明区分所有者の総会決議等からの除外手続き ・国内管理人制度の活用に係る手続き
・共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為等
・修繕積立金の使途
・マンションに特化した財産管理制度の活用に係る手続き
・共用部分等に係る損害賠償請求権等の代理行使 ○社会情勢等を踏まえた見直し 等
<リンク>
改正後のマンション標準管理規約等は、次のホームページで公表されています。
//www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansionkiyaku.html
- 単棟型(コメント含む)(PDF形式)

- 団地型(コメント含む)(PDF形式)

- 複合用途型(コメント含む)(PDF形式)
管理規約を見直さないと、どうなる? 10/26 国交省がシンポジウムを開催
国土交通省は10月26日10時~、東京・虎ノ門のビジョンセンター虎ノ門で、「マンション関係法改正でどう変わる?これからのマンション管理」をテーマに、マンション管理適正化シンポジウムを開催しました。
当日は基調講演として、国土交通省住宅局参事官・杉田雅嗣氏、同課長補佐・山岸侑氏より、令和7年マンション関係法改正および標準管理規約改正の紹介。また、法改正等に関する国土交通省の取り組み、マンションの管理に関する最新の動向などの説明がありました。
後半は「標準管理規約改正!管理規約を見直さないと、どうなる?」をテーマに、第一線で活躍するマンション管理の専門家によるパネルディスカッションを行いました。
【司会】
横浜市立大学 国際教養学部 教授 齊藤 広子 氏
【パネリスト】
横浜マリン法律事務所 代表弁護士 佐藤 元 氏
(一社)マンション管理業協会 業務法制委員会委員 久保 依子 氏
(一社)日本マンション管理士会連合会 副会長 髙辻 潤司 氏
(NPO 法人)全国マンション管理組合連合会 理事 藤木 賢和 氏
写真は左から、齊藤氏、佐藤氏、久保氏、髙辻氏、藤木氏
【パネルディスカッション概略】
●総会決議の多数決要件の見直し
(主な改正点)
・改正法の施行後、規約改正や共用部分の変更などの特別多数決議事項は、「出席区分所有者および出席議決権の各4分の3以上」の多数決で決められるようになる。
・定足数については、「区分所有者総数と総議決権の各過半数」とする定めがある 。
・共用部分の変更決議のうち、エレベーター設置や耐震補強工事については、出席区分所有者および出席議決権の各3分の2以上に多数決要件が緩和される 。
(実務上の留意点)
・催促しても委任状すら出さない、総会に出席しない区分所有者が一定数おり、総会の開催や決議ができないという悩みが軽減されることが期待される 。
・欠席者が決議の分母から除外されるため、出席するかどうかを事前に判断できるように、招集通知の記載事項を強化し、「議題のみでなく議案の要領」を示す必要がある 。
・総会招集通知について、改正法の施行後は、総会開催日の1週間前までに招集通知を発する必要があり、規約でこれより短縮する定めはできなくなる 。
●専有部分の給排水管等の全面更新
(主な改正点)
・規約に定めた上で、共用部分の変更に伴い、必要となる専有部分の保存行為等(給排水管の全面更新など)を、総会決議を経ることによって、管理組合が実施できることになる。
(実務上の留意点)
・管理組合が専有部分の配管更新費用を修繕積立金から支出する際、先行して配管更新を済ませた区分所有者に対する衡平性の確保措置を取る必要がある 。
・衡平性確保の具体的な方式は以下のとおり。
①全戸見積取得方式:先行工事実施住戸ごとに現在価値ベースで見積もりを取得する。高額になる、時間がかかるというデメリットがある 。
②タイプ別見積取得方式::部屋のタイプごとに見積もりを取得する。時間が短縮できるが、正確性は全戸方式に劣る 。
③全戸同額方式: 先行工事の住戸に一律の金額を支払う(お見舞金のような形)。財務が潤沢な管理組合に多い 。
●国内管理人制度の導入
(主な改正点)
・区分所有者が海外に住んでいる場合(総会通知の提出遅延、連絡困難、管理費の徴収困難など)のトラブルに対応するため、法律で国外管理人制度が導入される。
(実務上の留意点)
・国外管理人は、招集通知の受領、議決権行使、専有部分の問題対応、管理費・修繕積立金の支払いなどの権限をセットで有する 。権限はあっても、義務はないことに留意。管理費等の滞納があった場合、原則として国外の区分所有者本人に請求や裁判を行う必要がある 。
・管理組合は、この制度をそれぞれの管理規約で定めて、海外に住む区分所有者に対して義務付けることができる 。
・規約を改正するだけでなく、国内管理人に想定される人物(不動産会社、国内の親族など)を十分に説明し、選任される人へ事前に連絡を取るなど、丁寧な対応が必要 である。
※シンポジウムは会場とオンライン開催併用で行われましたが、当日の様子は国土交通省より後日、動画が配信される予定です。
損害賠償請求事件 平成27年10月1日東京高裁


【事件の概要】
長年、会計担当を務めた理事がマンションの預金口座から着服横領を行ったため、管理組合法人が当時の理事長、会計監査役員、副理事長に対して、善管注意義務違反を主張し、損害賠償を請求した事件。
【当事者】
◆管理組合法人X
・昭和46(1971)年竣工・39戸。
・昭和51(1976)年ころ、区分所有者全員によって自治会(区分所有法3条の区分所有者の団体)を結成、自主管理を行う。
・平成20(2008)年、管理組合法人を設立。自治会の権利義務を継承する。
◆横領した人物A(訴外)
Aは、平成6年から19年まで自治会の会計担当理事を務め、マンション自治会名義の預金口座の通帳・印鑑・キャッシュカードを管理。会計業務の一切に加え、出入金も1人で行っていた。
平成10年から、約1億1,530万円を着服・横領する一方、計約7,792万円を返還するなど、着服と横領を繰り返していたが、平成21年に逮捕。懲役3年の実刑判決を受け、刑期を終えて出所した。
◆当時の理事長Y1、会計監査役員Y2、副理事長Y3
・Y1は平成7年から平成19年11月まで自治会の理事長を務めた。
・Y2は平成7年から平成19年11月まで自治会の会計監査役員を務めた。
・Y3は平成6年から平成19年6月まで自治会の副理事長を務めた。
※自治会からは役員謝礼として、理事長6万円/年、副理事長5万円/年、会計担当理事6万円/年、会計監査役員5,000円/年が支払われていた。
【事件の経緯】
・Aは毎年、会計監査役員Y2に収支決算報告書、偽造した残高証明書を提示していた。
・収支決算報告書は、毎年の定期総会で承認を得ていた。
・横領で逮捕され、懲役3年の実刑判決を受けたAが出所したので、管理組合法人Xは平成23年9月、Aに対して不法行為に基づく損害賠償を訴えたところ、裁判所は領得残元本額約5,500万円プラス遅延損害金の支払いを命ずる判決を下した。
・Aには資産も返済能力もなかったため、管理組合法人XはY1~Y3に対して平成25年3月、各役員の職務執行上の善管注意義務違反を理由に、その支払いを求めて民事調停を申し立てたが不調に終わったため、本件が提起された。
※「領得(りょうとく)」=自己または第三者のものにする目的で、他人の財産を取得すること<大辞林第三版より>
【裁判所の判断】
・管理組合法人Xの主張による着服横領の損害を認める。
・Y1は収支決算報告の最終的責任者であり、会計業務の具体的内容について十分な確認をしなかった善管注意義務違反が認められる。
・Y2は会計監査役員として会計業務が適正に行われていることを確認しなかった善管注意義務違反が認められる。
・Y3はAの犯行を予見して何らかの措置を講ずべきであったとは言えないので、善管注意義務違反を否定する。
・Y1らは、非専従であり、多額とは言えない謝礼のみであった。
【結論】
・Y1、Y2に対し、連帯して(元本約5,500万円から9割減額した)約464万円プラス遅延損害金について、管理組合法人Xの主張には理由がある。
・区分所有者の管理組合運営への関心が高くなく、役員任せだったことから、過失相殺としてY1、Y2の責任を9割減ずることが相当であり、Y3に対する請求は棄却する。
【考察】(判例時報2274号より抜粋)
従来、マンション管理の実務において不正な会計、支出が問題になることがあり、実際に横領等の不正行為を行った理事等の責任が問われる事例が見られたが、本件は着服横領した理事の監督者の責任が問われた興味深い事件であるというところに特徴がある。
本判決は理事長等の善管注意義務違反を肯定し、副理事長の注意義務違反を否定。会計の監督者の法的な責任を認めたものであり、マンション管理の実務に与える影響は少なくないと予想される。
【コメント】
現在、理事会を廃止し、管理会社が管理者となる第三者管理者方式(管理業者管理者方式)を進める管理会社が増加しています。
区分所有者の無関心、役員のなり手不足がマンション管理水準の低下の招くのなら、管理会社がすべて決めて、実行すればよいのではないかということです。
国土交通省も、マンションの老朽化の先にあるスラム化を防げるのならばと、管理業者管理者方式を容認する構えで、新たな契約様式「標準管理者事務委託契約書」の検討をはじめ、この11月にも発表する予定です。
この「標準管理者事務委託契約書」において、一定の要件を満たせば印鑑等も管理会社が保管できるような規定となっています。
本件の事例と照合してみると、理事会(理事長、会計担当理事)はなくなり、全部管理会社となるわけですから、監事の役割はたいへん重要なものになります。
管理会社が管理者として決定権を持ち、業務執行も行い、出入金も自由にできるわけですから、チェック機能がままならなければ、利益相反行為はやり放題で、管理組合の財産は溶けてなくなってしまうでしょう。
本件は監督者の善管注意義務違反が問われ、賠償命令も下されました。そのことの意味を十分に理解してほしいと思います。
新刊紹介/『マンション区分所有法制の国際比較』

令和7年マンション関連法の改正は、令和4年9月12日に法務大臣による区分所有法制の見直しを求める旨の諮問が法制審議会に提出されたことから、改正作業が始まった。
その少し前、一般社団法人金融財政事情研究会が建替え決議の課題や考え方等を整理することを目的として区分所有法制研究会が発足。令和3年3月31日に第1回会議を開催した。その後19回の会議を重ねて令和4年9月30日に研究報告書を公表している。
この区分所有法制研究会が開かれている中、公益財団法人日本住宅総合センターが令和元年、早稲田大学法科大学院・鎌野邦樹教授を中心とした学者グループにより、欧米4カ国(ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ)における区分所有法の調査研究を実施。本書発刊の発端となった。
上記4カ国の法制について、最新の内容も踏まえて翻訳し、また、各国の区分所有建物についての問題・課題に関して、立法上どのような定めをしているか、概要を説明したのが本書である。
(マンション区分所有法制の国際比較.jpg)
編著者/鎌野邦樹(早稲田大学法科大学院教授)
著者/ドイツ法:藤巻 梓(国士舘大学法学部教授) フランス法:吉井啓子(明治大学法学部教授)、寺尾 仁(新潟大学准教授) イギリス法:大野 武(明治学院大学法学部教授) アメリカ法:花房 博文(創価大学法科大学院教授)
発行/株式会社大成出版社
判型/A5判・266ページ
定価/3,300円(税込)
発売日/2022年5月17日
<リンク>
//www.taisei-shuppan.co.jp/show/detail.html?code=3465
『団地と共生 芝園団地自治会事務局長 二〇〇〇日の記録』
前号で紹介した『芝園団地に住んでいます-住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』の芝園団地について、本書は30代で入居し、団地自治会の事務局長となった著者による記録である。
ほぼ芝園団地で占める芝園町で暮らす外国人は、団地ができて20年が経過した1997年に208人、2003年に1,000人、2009年に2,000人を超えて、2015年に日本人と外国人の人口比率が逆転。2022年1月現在、日本人2,094人、外国人2,581人で、外国人の大半が中国人だという。
夜遅く、中国人が商店会広場で騒いでいる。11時過ぎに子どもたちの声が響いているのだ。しかし、中国で夕食後に夕涼みするのは日常であり、普通のことだという。
誰かの日常は、ほかの誰かの非日常となる。中国人家族は若く、日本人は高齢者ばかりとなれば・・・、世代が違う、性格が違う、言葉が違う、育ち方が違う、前提として「共通点」が少ないのである。
ただ、事務局長が7年に及ぶ芝園団地での暮らしの中で気づいたものは、「日本人と外国人」との対立軸で語られるトラブルは、実は日本人同士でも起こりうることであり、どこのマンションにもある問題ということだった。
人と人との関係性は、UR賃貸団地の自治会活動、分譲マンションの管理組合活動、双方に通じるものがあることがわかる一冊である。
編著者/岡﨑 広樹
発行/有限会社論創社
判型/四六判・232ページ
定価/1,980円(税込)
発売日/2022年11月30日
ISBN: 978-4-8460-2105-4
<リンク>
//ronso.co.jp/book/%E5%9B%A3%E5%9C%B0%E3%81%A8%E5%85%B1%E7%94%9F/
横浜市、本当に管理組合のためになる?! 大規模修繕工事の入札代行サービス開始
「横浜市は、大規模修繕工事に入札が適さないことを理解されていないようですね」―10月16日、横浜市と横浜市住宅供給公社が発表した「マンションの大規模修繕入札代行サービス」に懸念の声が上がっています。
設計監理方式による大規模修繕工事実施の流れとして、①建物調査、②設計(工事計画)、③施工業者選定、④工事実施(工事監理)の中で、③施工業者選定だけを取り出し、横浜市住宅供給公社が入札のみのサービスを行うというものです。(右図)
工事の「入札」方式は、複数の受注希望者の中から最低価格で落札した業者を受注者に選ぶ方式です。
現在、設計・監理方式で一般的に行われている施工業者選定は、複数の見積もり参加希望者に見積金額を提示させるとともに、施工業者からのプレゼン、管理組合から施工業者へのヒアリングなどを経て、技術力、施工実績、保証内容なども含めて総合的に判断する方法が採用されています。
ところが、横浜市の入札代行サービスでは、こうした業者選定に関するプロセス(見積もり比較・検討)をなくし、「入札」だけで決めることになります。
つまり、単に、一番安い金額の札を入れた施工業者を選定する仕組みといえます。
施工業者の参加資格は、「横浜市有資格者名簿より」とあります。マンション改修に特化していない施工業者でも、最低価格で落札できることになるのです。
横浜市のサービス導入理由
横浜市では、入札代行サービス導入の背景として、「昨今、各種報道にて大規模修繕工事の一部において不適切な形で入札が行われている場合がある」とし、その悪質な事例として、「公募としつつもあらかじめ決まっていた業者が不当に割高な工事費で落札するといったケース」などを上げ、国交省からの①設計コンサルタントに関する不適切な事例への注意喚起、②談合報道に起因する工事請負契約時の留意事項を上げています。
こうした状況を打開するための方式として、入札代行業務のみ横浜市住宅供給公社に委託する入札代行サービスを開始したというわけです。
入札代行サービスの費用
建物調査、設計(工事計画)、工事監理をのぞく、施工業者選定だけで、1%の利用料は受け入れられるでしょうか?
「1億円の工事規模の施工業者選定だけで100万円は高すぎ。結局、費用がネックとなって採用されないのでは?」―大規模修繕工事の設計コンサル、施工業者、メーカーで組織するNPOの役員の話です。
繰り返しますが、入札代行サービスの施工業者選定は「入札」だけで、プレゼンやヒアリング、見積比較などの総合的に判断する方法ではないものです。
入札代行サービスの了解事項
横浜市住宅供給公社の免責事項
最後につけ加えておきたいのが、入札代行サービスの了解事項および横浜市住宅供給公社の免責事項です。
資料にあるものをそのまま添付しました。(右図)
①設計図書の内容については、当然設計コンサルの責任としています。あくまで「入札代行」のため、②管理組合への理事会や総会への出席・説明は行いません。
③落札者とのヒアリングもありません。④入札スケジュールのとおり管理組合で必要な手続きをしてください。⑤落札者との契約も管理組合で直接行ってください。
⑥トラブルが起こっても、設計コンサル、落札者、管理組合の当事者間で行ってください。横浜市住宅供給公社にトラブルを持ち込まないでください。
⑦サービスの目的は談合等の不適切行為を縮減させるものであるため、不適切行為があってもそれが防げないことの責任は持てません。
⑧⑨はよいとして、⑩では「トドメ」とばかりに、落札者の審査は「提出書類の審査に留まるため」横浜市住宅供給公社には責任はない、と締めくくっています。
本当に管理組合のためになるサービスなのか?
確かに談合、なりすまし等、マンションの大規模修繕工事を取り巻く問題がはびこっています。
とはいえ、最低価格での入札がマンションに適するのかといったら、それはNOといえるでしょう。
なにより、マンション大規模修繕工事は、居住しながらの工事です。落札者の素性もわからず、知ったところでマンションの実績が少ない施工業者だった場合、どうするのか?納得がいくまで入札を繰り返すのでしょうか?
それならば、やはり施工業者からのプレゼン、それも提案も含めた見積提示。そして現場代理人を入れたヒアリング。現場代理人の人柄の印象は大切です。
このように総合的な判断をして施工業者選定をしなければ、工事がはじまってからの不安は拭えないものと思えます。
そして入札代行サービスの利用料が高い。
だいたいなんでサービス利用料が入札価格をベースにした%なのでしょう?そういう発想こそ、そもそもバック札価格をベースにした%なのでしょう?そういう発想こそ、そもそもバック入札代行サービスのイメージで飛びつく管理組合もいるかと思いますが、本当に管理組合のためになるサービスなのか、今後の各方面からの反応を見守りたいと思います。
『マンションAI』活用術② 『マンションAI』に相談し『マンションAI』に相談してみよう!
マンションAI』に相談してみよう!
現在、全建センターの『マンションAI』は数多くのマンションの理事、あるいは組合員からご質問が寄せられ、それに対してマンションAIが回答している、という実例があります。
このコーナーでは、実際にこの数カ月の間に管理組合の皆さんが『マンションAI』を活用されている実例を紹介します。
【監修】全建センター筆頭理事・佐藤成幸
Q 12年周期で大規模修繕工事はやる必要あるの
A 12年周期で大規模修繕工事を行う必要があるかどうかは、建物の劣化状況や管理組合の財政状況、修繕計画の方針によって異なります。以下の情報を基に考えてみましょう。
1. 12年周期の背景
一般的に、12年周期で大規模修繕工事を行うことが推奨されるのは、建物の劣化を防ぎ、長期的な維持管理を行うためです。特に外壁や防水工事などは、劣化が進むと修繕費用が増大するため、定期的なメンテナンスが重要とされています。
2. 長周期化の可能性
書籍の記述によると、大規模修繕工事の周期を12年にこだわる必要はなく、建物の劣化度合いに応じて実施時期を判断することが重要とされています。例えば、劣化が少ない場合は15年以上に延ばすことも可能です。
また、修繕を分散させる「中規模・分散方式」を採用することで、単年度の大きな支出を避け、財政負担を軽減する方法も提案されています。
3. 判断基準
建物診断: 修繕の必要性を判断するために、専門家による建物診断を実施することが推奨されます。これにより、外壁や防水、設備の劣化状況を把握できます。
財政状況: 修繕積立金の残高や管理組合の財政状況も考慮する必要があります。無理に12年周期で工事を行うと、赤字になる可能性があるため、計画的な資金管理が重要です。
4. メリットとデメリット
12年周期のメリット
劣化が進む前に修繕を行うことで、建物の価値を維持しやすい。
大規模な劣化や損傷を防ぐことで、将来的な修繕費用を抑えられる。
長周期化のメリット
修繕積立金を計画的に貯める時間が増える。
単年度の財政負担が軽減される。
長周期化のデメリット
劣化が進みすぎると、修繕費用が増大するリスクがある。
5. 結論
12年周期で大規模修繕工事を行う必要があるかどうかは、建物の状態や財政状況に応じて柔軟に判断するべきです。
必要に応じて、建物診断を行い、劣化状況を把握した上で、修繕計画を見直すことが重要です。
また、長周期化や分散方式を検討することで、財政負担を軽減しつつ、適切なタイミングで修繕を行うことが可能です。
もし具体的な建物の状況や修繕計画についての詳細があれば、それに基づいてさらに具体的なアドバイスが可能です。
寒暖差でやられる 思わぬ症状

ここのところ、朝晩が急激に冷えてきました。とはいえ日中はまだ30度を超える暑さの日もあり、朝晩と日中の気温差が10度を超えてきました。
昼間は暑いので、毛穴が開き汗をかいていますが、夜になると一気に冷えて毛穴も閉じます。これが通常の反応ですが、長い夏の疲れで自律神経の反応が弱っていると、気温が下がっても毛穴が閉じず、寒気が体に侵入しやすくなります。
特に、油断して薄い掛け布団のまま眠ったり、布団を跳ねてしまっていると、明け方の気温の低下で体が冷えて、この時期特有のトラブルに見舞われる事があります。
一つ目は、寝違いや筋違い、寝ている間のギックリ腰などです。寝ている間、血液は主に内臓の方に集まり、その日の解毒や栄養の取り込みなどをやっていてくれるために、骨格筋への血流量は低下し、筋肉はただでさえ冷えて硬くなりやすいです。布団が外れていたりするとますます筋肉が冷えて引き攣り、寝返りを打っただけでも筋違いを起こしやすくなります。
二つ目は、朝起きた時に体が冷えて、頭がぼんやりする、眩暈がする、手足が重だるい、元気が出ないなどの症状です。ひどいと、お腹を下したりすることもあります。
特に前の晩にビールを飲んだり、冷たいものを食べた、冷麦、冷やし中華などの麺類を食べた、ヨーグルトやアイスクリームなどの乳製品を食べると、体の中にゼリー状の痰湿を作りやすくなり、それが気の巡りを塞いでしまうために、ぼんやりと気怠い症状に襲われやすくなります。
こんな時の対処法をご紹介します。
1、晩ごはんには、麺類、油物、乳製品、甘いものなどを避けて、ご飯とお味噌汁におかずという和定食がお勧めです。
2、寝るときに適温でも明け方冷えることも想定して寝具を選んでください。特に首筋が冷えると一気に体が冷えて硬くなりますので、タオルやストールなどで必ず首元をガードして冷やさないようにご注意ください、
3、症状が出てしまったら、まず温灸器などで首筋の大椎を温めます。全身に温かい陽の気を送るツボで、筋肉を柔らかくし、痛みやコリを和らげます。温灸器がなければ、ペットボトルに温かいお湯を入れて温めたり、ドライヤーで首元を温めるのもアリです。
4、さらに体を温めて痰湿を溶かし、気の巡りを回復させるには、葛根湯を温かい紅参茶で飲むのが良いです。
5、痛みが強ければ、松の節のエキスなどで、督脈を温めるとさらに効果が上がります。
(薬剤師・国際中医師・国際薬膳師 高田理恵)
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