「外部管理者ガイドライン」を再改訂/4月1日改正法施行に合わせて公表予定/国土交通省

しかし、この方式は区分所有者の意思反映が困難になるリスクや、特に管理会社が管理者となる「管理業者管理者管理方式」は自己契約、利益相反のリスクが生じる懸念を含んでいます。
このため、国土交通省は「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」の再改訂を進行中で、3月12日から3月25日まで意見募集(パブリックコメント)が行い、4月1日の改正法(改正区分所有法およびマンション管理適正化法)施行に合わせて公表を予定しています。
ここでは、本ガイドラインの再改訂案をもとに、外部専門家やマンション管理業者が管理組合の「管理者」に就任する方式の留意事項をまとめました。
1. ガイドライン改訂の背景と目的
担い手不足への対応::区分所有者の高齢化等で役員のなり手が不足する中、マンション管理士等の外部専門家や管理業者が管理運営を主導する「外部管理者方式」のニーズが高まっています。
法改正への対応::4月1日の改正法(改正区分所有法およびマンション管理適正化法)により、管理業者が管理者を務める際のルールが強化されたことを受け、実務上の指針として本ガイドラインが改訂されました。
2. 「管理業者管理者方式」における適正化措置
今回の改訂の目玉であり、管理業者が「発注者(管理者)」と「受注者(管理業者)」を兼ねることで生じる弊害(利益相反)を防ぐための措置が強化されています。
利益相反取引の事前説明義務::管理業者が自社やグループ会社と取引を行う場合、総会決議の前に、区分所有者に対して取引内容や選定理由などの「重要な事実」を説明することが法律上義務付けられました。
業務執行体制の分離::同一社内であっても、「管理者事務(組合代表としての業務)」と「管理事務(委託された現場業務)」の担当者を別の部門の所属とするなどの体制整備が求められます。
印鑑・預貯金口座の管理::原則として管理業者は印鑑等を預からないこととし、例外的に保管する場合は保証契約の締結や総会決議などの厳格な要件を満たす必要があります。
理事会を置かない形態が多いため、管理者の業務をチェックする「監事」の役割が極めて重要視されています。
監事の選任::独立性を確保するため、監事は管理者の指名ではなく総会で選任し、外部専門家(マンション管理士等)と区分所有者からそれぞれ1名以上選任することが推奨されています。
監事の権限:管理者が不正を行う恐れがある場合の臨時総会招集権や、予算案・決算案の事前調査権限などが明記されています。
既存マンション:導入のメリット・デメリットを慎重に検討し、区分所有者への説明会やアンケート、総会での導入推進決議・導入決議といったステップを踏むことが示されています。
新築マンション:分譲時の重要事項説明において、管理業者管理者方式を導入しているかどうかの説明が義務化されました。
5. 新旧対照表に見る主な変更点
契約ひな形の整備:改正法に対応した「標準管理者事務委託契約書」の反映や、管理者退任時の業務引き継ぎ、反社会的勢力の排除条項などが具体化されました。
総じて、外部管理者の専門性を活かしつつ、「区分所有者が管理の主体である」という原則を維持するための監視・牽制機能をどう構築するかに重点が置かれています。
<リンク>
//public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000309448
(参考)新旧対照表
//public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000309449
マンションAIを活用した『マンション総研』スタート! 管理組合運営、大規模修繕・給排水設備改修を支援
マンションAIを活用した管理組合運営支援、大規模修繕工事・給排水設備改修工事コンサルティングを手がける一般社団法人マンション管理士総合研究所(略称:マンション総研、水島一〈みずしま・はじめ〉所長)が活動をスタートさせます。
マンション総研は、全建センターの認定団体で、管理組合へのコンサルティングを主要業務とします。
水島所長はマンション総研の立ち上げに際し、「セカンドオピニオンの欲する管理組合に対し、選りすぐりの専門メンバーを揃え、最大限のバックアップをお約束します」と話しています。
令和8年度「マンションストック長寿命化等モデル事業」 第1回募集は4月1日~4月15日
国土交通省は3月16日、今後急増が見込まれる高経年マンションに対し、老朽化マンションの再生検討や長寿命化に資する先導的なプロジェクトを支援する「マンションストック長寿命化等モデル事業」の募集要項を発表しました。
本事業は、優良な事例やノウハウを収集し、全国へ普及展開させることを目的としています。
1. 事業のモデルタイプ
本事業には、取り組み内容に応じて2つのモデルタイプを設定しています。
先導的再生モデルタイプ:先導性が高く創意工夫に富む、長寿命化に向けた改修や建替えの取り組みを支援します。
管理適正化モデルタイプ:総会の開催がない、適切な長期修繕計画がないなど、管理水準の低いマンションが地方公共団体と協力して管理の適正化を図る取り組みを支援します。
2. 支援内容と補助率
事業の段階に応じて、以下の支援を受けることが可能です。
計画支援(事業前の立ち上げ準備段階):調査・検討等に係る費用を支援します。
補助事業者:マンション再生コンサル、設計事務所、管理会社等
補助率:定額(原則上限500万円/年、最大3年)
工事支援(実施段階):長寿命化に資する改修工事や、一定の要件を満たす建替工事を支援します。
補助事業者:施工業者、買取再販業者等
補助率:1/3
3. 評価のポイント
令和7年度より「優先募集枠」が追加され、以下の取り組みなどが高く評価されます。
・自主建替え(デベロッパー等が参加せず管理組合が主体となる建替え)の検討
・超高層マンションにおける給排水管設備や防災設備の改修検討
・団地型マンションにおける敷地分割事業の検討
・省エネルギー性能の向上や、防災対策(電気設備の浸水対策等)
4. 令和8年度 提案受付期間
提案の受付は、以下の3回に分けて実施されます。
・第1回募集:令和8年4月1日(水)~ 4月15日(水)
・第2回募集:令和8年6月22日(月)~ 6月26日(金)
・第3回募集:令和8年9月14日(月)~ 9月18日(金)
<リンク>
詳細な募集要領や過去の採択事例は、以下の国土交通省ホームページにて公表されています。
募集要項
//www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr5_000037.html
(報道発表資料別添)長寿命化等モデル事業
//www.mlit.go.jp/report/press/content/001987410.pdf
長寿命化等モデル事業の概要
//www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001912177.pdf
第79回管理組合オンライン・セミナー採録 第2章 専有部分工事までの道のり
一般社団法人全国建物調査診断センターが2月22日に配信開始した第79回管理組合オンライン・セミナーを抜粋 ・採録する2回目です。前号では第1章として、共用部分の工事の経緯、工事内容などについての説明でした。今回は、第2章「専有部分工事までの道のり」です。講師は、全建センター給排水設備改修相談室・木村章一室長が務めます。
第2章「専有部分工事までの道のり」
ここまで共用部分の給排水設備改修の進行状況を説明してきましたが、ここからは第2章として、専有部分まで改修しないと、やっぱりマンションの漏水は止まらない、そうしたところから、専有部分まできちっと直していこう!ということで、今度は「専有部分工事までの道のり」をご紹介したいと思います。
2023年1月、補助金の交付が決まったことで、続けて専有部分給水管・給湯管更新工事への期待が高まり、管理組合で居住者のアンケートを実施したところ、76%の方が専有部分給水・給湯管の更新工事を修繕積立金で行うことについての希望がありました。
これを受けて、専有部分を進めていこうと動き出します。
2023年1月~5月の間、着工までのスケジュールの整理や長期修繕計画の見直し、そして居住者への情報発信を行っていました。
ただ、情報を発信すれば、当然反対者も出てきます。300世帯もあるので、一部の反対者から全戸に怪文書が数回配られるようなこともありました。
2023年5月末、それでも前向きにやっていこうと、専有部分給水給湯管更新工事の実施に向けた専門の委員会を設置し、有志4人でスタートさせました。
会合は毎週1回、全建センターからも私ができるかぎり参加しまして、なんとかスムーズに専有部分の工事着工までいけるようにお手伝いをさせていただきました。
2023年7月、共用部分改修工事進行中に管理組合と全建センターで専有部分のコンサルティング契約を結び、全建センターはコンサルタントとして、専有部分給水給湯管更新工事計画を進めることになりました。
専有部分の給水給湯管の工事計画の特徴として、設計は共用部分の施工会社が行うということがあります。もともと、この専有部分の給水給湯管については、共用部分の更新工事を受注した会社がオプション工事として住民説明会でも提案。配管の経路や内装の解体、復旧範囲などがある程度固まっていたのです。
2023年9月、専有部分給水給湯管更新工事についての説明会を行いました。
このとき、女性委員の方から、工事の内容が難しくてわからないという声があがったため、女性向けの意見交換会や女性委員が主体となって会合を持つことによって、全体での理解を深めていったというのも、工事が成功した大きな要因ではないかなと思います。
2023年9月以降、住民に工事の理解を深めてもらうため、配管更新検討委員会でコラムを作成。「専有部配管更新はどうなっているのか」「管理組合が行うべきか」「修繕積立金は大丈夫か」「個人の意見の反映は?」「更新済みへの対応」「天井配管はしたくない」「「今後の日程は?」など、全戸に配布し、みんなでやっていこうという雰囲気を作っていきました。
2023年11月、臨時総会を開催し可決。
2024年6月、専有部給水管・給湯管・追いだき配管の更新工事を着工させることができました。
続いて第3章では、実際に奮闘された管理組合の馬場理事長を招き、共用部分、専有部分の設備工事について、いろいろなお話を伺いたいと思います。
第79回管理組合オンライン・セミナー採録 <インタビュー>『マンション給排水管改修の真実~給排水管改修工事 成功への軌跡』

一般社団法人全国建物調査診断センターが2月22日に配信開始した第79回管理組合オンライン・セミナーを抜粋 ・採録する3回目です。最後に、給排水管改修工事を行った管理組合・馬場満喜榮理事長と全建センター給排水設備改修相談室 ・木村章一室長との対談を採録します<編集部で講演録を再構成しています>。

木村 共用部分の給排水管改修工事、専有部分の給水給湯管こうしん工事を一気にやりました。一番苦労したことは何でしたか?
馬場 私の理事長任期中(残り半年)に後戻りできない形にするにはどうしたらよいかと、思い悩んだことでした。
2013年、前の管理会社から配管更新の必要性についての提案があったのですが、8年間棚上げにされた状態で、私が理事長在任中のこのとき、この段階でやらないとしたら、今後いつ配管更新ができるのか、と思って危機感を感じ、何とかしなければと思いました。
今でしたら、工事費が高騰しており、いい時に行ったと思っています。また、あの時行わなければ、漏水件数が増え、その対応に追われていたのではないかと推察します。併せて、工事費の高騰から修繕積立金不足が考えられ、工事の実施そのものに支障が生じていたかもしれません。
木村 馬場さんの任期中に目処をつけるということですが、具体的にはどんな内容だったんでしょうか?
馬場 総会で承認を得て、ある程度GOが出るところまで持っていければ、なんとか後戻りできないんじゃないかな、ということです。
更新工事を推進するためには、入札方法、応募会社との価格交渉、工事仕様のすり合わせ、長期的な修繕積立金の推移・確認、日程管理など企画管理の要素と専門家との技術的すり合わせをしなければなりません。
難しい判断や管理漏れの防止などを考えると、素人の集まりの理事会では判断が難しく、時間ばかり経過する恐れがあることから、私が現役時代の経験を活かすことで促進できると考えました。

木村 任期中に目途を付けると言われましたが、馬場さんの経歴と判断力は?
馬場 私は現役時代、購買部門を中心に企画立案業務でいろんな角度から多面的にチェックする習慣があり、中期計画の立案・契約締結交渉・価格査定・交渉、取引先評価など実務もあるので、工事計画の推進・調整業務は他の方と比べ経験があると思っています。
即断即決は悪い意味で使用されがちですが、「早い判断と正しい判断は矛盾しない」です。
玉石混合の情報を「信用はするが確認する」の気持ちで、自分なりに情報を確認し、整理し、問い合わせに対し即自分なりの回答できるように心がけてきましたので、早い決断ができたと思います。
木村 馬場さんができないと判断された理由は?
馬場 管理組合の理事会は素人の集まりで、なおかつ1年間の輪番制ですから、知識も判断力も乏しく、工事内容の理解不足や判断の誤りが予測され、意思決定に時間がかかることは明らかです。
木村 9月末の管体検査、11月検査報告、12月末改修工事と、基本コンセプトの期間がすごく短かったですがいかがでしたか?
馬場 やはりこういう更新工事は、管理組合が中心になって、自分たちが納得できるような形で進めたいというのがあります。
そういう考えでしたから、自分たちの考えとコンサルタント会社の考えとのすり合わせを進めていく形になったと思います。
木村 短い期間で、一緒に水道局に行ったり、市の道路局に行ったり、あと住民説明会も6回やったので、お互いに大変疲れたな、という感じでしたよね。
馬場 住民説明会は、組合員の皆さんの理解なくして、工事は実施できないと思っていましたから、具体的に説明して、より理解を深めてもらうということが全て、工事の成功のためであって、住民の皆さんへの貢献だと思って、そういう感じで動いたつもりですが、疲れましたね。
木村 それでも臨時総会はだいぶ荒れましたね?
馬場 自分が納得していれば、どのような質問が来ても、それに対して対応はできます。
一部で、猛烈な反対をする人がいましたが、おかげで説明会では検討している詳細な内容を皆さんにお知らせできたので、より理解が深まったと思います。
結果的に工事の必要性の理解が得られたようで、更新工事とその予算の決議が通りました。
木村 それでは更新工事を行うにあたり、一番心がけたことはなんですか?
馬場 管理組合の役割というのは、住民の方が 「住んでいてよかった」と思えるよう、環境を作るということが一番大きいので、の工事にあたっても重要なのは、組合員の皆さんが「やってよかった」と思えるようにすることでした。
それから、全建センターさん、工事会社さんが気持ちよく仕事ができ、更新工事が円滑に進められるように心がけたつもりです。
何でも施工会社にお願いすることはせず、管理組合が行うべきことはきっちり行い、施工会社さんや全建センターさんが困らないで、スムーズに工事推進できるように心がけました。
木村 実際結果本当にそうなったなって思います。多くのマンションでは、専有部分の立ち入り同意書をなかなか出してくれない。それを管理組合の皆さんが一件一件、インターホンをして同意書を出すように説得してくれたこともすごく大きかったなというふうに思っています。
馬場 専有部立入りについて、同意書の作成・配布・回収・回収フォローは一般的に施工会社が行っているようですが、管理組合も一緒に行いました。
木村 今回の共用部分の工事の設計積算額は3億5,000万円。見積募集で7社入ってきて、1社辞退しました。実際、工事会社との交渉、価格の交渉というのはいかがでしたか?
馬場 全建センターさんの積算価格で大枠の工事価格が見えたので、応募会社各社の見積金額が見やすくなりました。また、項目ごとの対比表で比較検討のうえ、予算枠に入るにはどうしたらよいかも見やすくなりました。
交渉に当たってはいくら下げろではなく、全建センターさんに会社の評価の仕方をいただいて、一番可能性があるところに対して1社に絞って交渉しました。
管理組合の環境を説明し理解を求め、直接面談では相手の様子から行けそうかどうかの見極め、いろんな角度から理解と納得を得るネゴシエーションに心がけました。
無理な要求は必ず手抜きやいい加減といったほころびが出ます。これくらいなら飲んでくれそうの線で双方が納得できる数値をいかに見つけるかと思います。
木村 多くの管理組合では、3社ぐらいをチョイスしてその3社に対してヒアリングしたり、3社に対して交渉するんですけど、今回はもう1社に絞ったのですね?
馬場 その会社がもしも私たちの要求の合意に達しなければ、次の会社になる。そういう含みは持っていました。
木村 更新工事での住民の協力はいかがでしたか?
馬場 説明会を頻繁に行ったり、パンフレットを配ったりということから、組合員の協力という面ではあまり心配しなかったですね。ですから、協力的にみんな動いてくれたというふうに感じています。
木村 最後に、視聴者に向け、馬場さんからみた管理組合の在り方、またはアドバイス的なものはありますか?
馬場 管理組合というのは、命令で動く組織じゃなくて、合意で動く組織です。
ですから20年を超えたようなマンションであれば、役員は最低2年の半数交代。できれば3年で3分の1交代ぐらいがよいかと思います。
それと同様に、修繕を中心としたコンサルタントは絶対必要だと思います。
建物のあちらこちらに問題が出てきますので、素人ではなく専門家の意見を素直に聞くというふうなことが必要だと思っています。
木村 私が一番感じたのが馬場理事長の熱意というか、絶対やるというところがすごく感じたところでした。
馬場さん、貴重な体験談、ありがとうございました。
本セミナーの視聴動画は下記URLよりVimeoとYouTubeで公開しています。
//zenken-center.com/79sm
また、本セミナーの詳細は、全建文庫No.60 『マンション給排水管改修の真実~給排水管改修工事 成功への軌跡』に収録されています。
全建文庫電子版は、全建Library(サブスク)で読み放題になります。
下記URLより登録申し込みをお願いします。
//z-book.jp
日経メッセ 街づくり・店づくり総合展 NPO日住協・柿沼会長が講演

日本経済新聞社は3月3日~3月6日は東京ビッグサイトで、「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」を開きました。この中の「建築・建材展」に「マンション管理・リフォームゾーン」を設け、NPO日本住宅管理組合協議会(NPO日住協)がマンション管理に関する無料相談ブースを設けました。
3月3日はNPO日住協・柿沼英雄会長が「マンションの居住価値向上を目指す~ビジョンの策定と自立管理について~」と題してセミナーを行いました。
セミナーでは、NPO日住協が提唱する、「マンションの居住価値向上に向けた自立管理」の重要性を説明。管理会社に依存しすぎず、管理組合が主体となって明確なビジョンを策定し、民主的かつ透明性の高い運営を行うことを推奨しました。
具体的な支援内容としては、長期修繕計画の見直しや大規模修繕工事のコンサルティング、住民間の合意形成を促すワークショップなどを紹介しました。
老朽化や居住者の高齢化といった課題に対し、ハードとソフトの両面から対策を講じることで、資産価値を超える住み心地の良さを追求する指針が示されています。
また、実際の建替え成功事例も掲載されており、持続可能な住まいづくりへの具体的な道筋を提案いたしました。
不在と思っていた住戸に人がいた!? 専有部分の立ち入り拒否禁止、排水管洗浄等作業の妨害禁止を命じる

令和6年11月27日東京地裁
【当事者】
原告:管理組合(権利能力なき社団)
被告:区分所有者(家庭裁判所により選任された不在者財産管理人=弁護士が付いている)
【主文】
1.被告は、原告または原告の指定する業者が専有部分内に立ち入り、キッチン、洗面所、風呂、トイレ、洗濯機置き場に設置されている排水管を点検、洗浄することを拒否してはならない。
2.被告は、原告または原告の指定する業者が作業できるようにせよ。
3.被告は、原告または原告の指定する業者の点検および洗浄作業を妨害してはならない。
4.被告は、原告に対し、弁護士費用として95万7000円(税込み)および遅延損害金を支払え。
【事案の概要】
本件は、被告専有部分において10年以上にわたり排水管洗浄のための立ち入り拒否が続き、階下への漏水事故も発生したことから、原告管理組合が管理規約に基づき、排水管の点検・洗浄の受忍と妨害禁止、および訴訟に要した弁護士費用の支払いを被告に求めた事案。
【認定事実】
・平成25年10月、東京家庭裁判所は、被告の親族の申立てに基づき、被告の不在者財産管理人として不在者財産管理人弁護士法人を選任。その後、担当弁護士が、被告の財産管理を行うようになった。
・管理会社も数年単位で被告とは連絡が取れない、管理費の滞納があるなどから、原告が債務名義を取得し強制競売手続を行った。
・競売手続において執行官が被告専有部分のドアを解錠したところ、中に人がいた。
・この人物は執行官に対して金属棒を振り回すなどして抵抗し、強制執行手続を継続することができなかった。
・担当弁護士が被告専有部分を訪れても、チャイムや呼びかけに反応することはない状態が続いていた。
・令和4年5月、被告専有部分の下階の天井部分から漏水が発生。管理会社担当者と担当弁護士が被告専有部分に出向いたが、居住者は玄関扉を開けなかった。
・現に漏水が発生している状況から「緊急」と判断し、被告専有部分に強制的に立ち入ったところ、洗面所下に漏水跡が確認されるとともに、浴室の排水管が詰まっており、水が流れない状態になっていること等が確認された。
・上記確認が行われている間、被告専有部分の居住者は「外に出て行ってください」と繰り返し叫ぶという行動をとり続けた。
・令和5年5月、原告は定期総会において、消防設備点検及び雑排水管洗浄を行うことの妨害の禁止を求める訴訟を行うことを議決。同年10月に本件訴訟を提起した。
【裁判所の判断】
・原告の請求を全面的に認め、被告に対し、排水管の点検・洗浄の拒否禁止、玄関扉の解錠、および作業の妨害禁止を命じた。
・経済的利益の基準の採用について、原告は、被告側が請求の主要部分を認める和解案を提示し、裁判所が試行的な調査を促したにもかかわらず、これを拒絶して紛争解決を困難にした。
・この特段の事情を考慮し、経済的利益を800万円の半額である400万円として算定するのが相当である。
【結論】
・被告に対し、点検等の受忍に加え、弁護士費用として95万7000円(税込み)および遅延損害金の支払いを命じた。

『マンション総会運営マニュアル
-管理組合の意思決定プロセスはこれでクリアに-』

令和8年4月1日施行の区分所有法改正法を踏まえ、管理組合の意思決定の最高機関である「総会」の運営方法について、フローチャート、参考書式、想定Q&Aなど実務的アプローチを用いてまとめられた実用書です。「東京弁護士会マンション管理相談窓口」の担当弁護士による膨大な相談実績、法的知見が結集されています。
総会は、その手続きや議案の内容に不備があると、総会決議が無効とされるリスクがあります。総会をめぐる紛争を未然に防ぐため、総会の適切な進め方についてわかりやすく解説されたのが本書です。「管理組合必携の一冊」ともいえるでしょう。
『マンション総会運営マニュアル
-管理組合の意思決定プロセスはこれでクリアに-』
2025年10月21日発行
編集/東京弁護士会 弁護士業務改革委員会マンション部会
判型/B5判378ページ
定価/4,950円(税込)
発行/新日本法規出版㈱
ISBN 978-4-7882-9607-7
<リンク>
マンション維持費「インフレ」の波、どう向き合うか
管理費7.5%%、修繕積立金16.5%上昇
公益財団法人東日本不動産流通機構の調べによると、2024年度に成約した首都圏中古マンションにおける管理費は、月額平均13,847円(2020年度比約7.5%上昇)で、修繕積立金は月額平均13,177円(同比約16.5%上昇)を記録しました。㎡当たり単価では、管理費216円(2020年度201円)、修繕積立金205円(同176円)となっています。
かつては「失われた30年」と言われ、低成長が続いていたため「一定」と思われていた維持費が、いまや明確なインフレの波に飲み込まれています。そして、家計への負担増がよりいっそう深刻な課題となっています。
「人手不足」と「資材高騰」
管理費を押し上げている最大の要因は、人手不足に伴う人件費の高騰です。管理員や清掃員の人手不足が深刻化しており、設備点検など下請け業者の賃上げ要求も手伝って、管理会社への委託費の高騰に直結しています。
さらに共用部分の電気代上昇や、災害リスク増大による火災保険料の改定も、管理費のコスト増に拍車をかけています。
一方、修繕積立金については、建築コストの急騰が直撃しています。建築費は2012年以降、建築費は右肩上がりで、2023年までの上昇率は30%を超えています。2020年頃からは特に建設資材が急騰しています。
また、分譲時の販売を容易にするために当初の修繕積立金の設定額を抑え、段階的に値上げする「段階増額積立方式」を採用しているマンションが多く、構造的に将来の値上げが避けられません。
保守的すぎる長期修繕計画
見落とされがちなのが、管理会社が作成する長期修繕計画の「中身」です。多くの計画は、安全性を最優先するあまり非常に保守的な設定になっています。
たとえば、耐用年数が15年の設備をあえて12年で交換するような計画です。
管理会社にとっては安全策ですが、管理組合にとってはコスト増につながります。「本当に今、その工事が必要なのか?」を精査するだけで、数百万円から数千万円単位の支出を抑えられる可能性があるのです。
値上げの波に呑まれないための対策
では、このインフレの波を乗り越えるには、どのような対策が必要でしょうか?
それには、ただ値上げを受け入れるのではなく、支出と計画を抜本的に見直す「経営者視点」の対策が不可欠です。
1.管理仕様の精査
点検や清掃の頻度が過剰ではないか、管理員の勤務時間が適切かを見直すことで、サービス品質を維持しつつコストを削る余地があります。
また、空き駐車場の外部貸し出しや、利用者の減った共用施設を収益施設へ転換するといった「稼ぐ」努力も一案です。
2.修繕周期の「超」長期化
修繕積立金については、「修繕周期の長期化」が鍵を握ります。
高耐久な資材を活用し、従来12年前後だった大規模修繕の間隔を15〜18年に延ばすことで、マンションの生涯コストを大幅に抑制できます。
管理会社が作成する計画は往々にして保守的であり、耐用年数に余裕がある設備まで早期交換が盛り込まれているケースも少なくありません。
3.第三者の「セカンドオピニオン」活用
「具体的な費用内訳」や「将来の収支見通し」を精査する場合、その妥当性を判断してもらうのは第三者の専門家です。
専門家の診断による「セカンドオピニオン」を活用することが、過剰な値上げを防ぐための最大の近道となります。
◇ ◇ ◇
マンションの資産価値を守るのは、管理会社でも国でもなく、住民自身の「関心」です。
マンション管理の質を落とさずにコストを最適化するための鍵は、住民一人ひとりの「関心」にあります。 一部の役員に任せきりにせず、多様な世代や性別の住民が管理に意見を言える環境を作ることが、健全な運営と資産価値の維持につながります。
「値上げは避けられない」と諦める前に、まずはご自分のマンションの管理仕様や長期修繕計画を確認し、専門家の知恵を借りながら、未来の収支を自分たちで話し合ってみましょう。
<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2026-4-02>
『「マンションAI®」活用術⑦ 「マンションAI®」に相談してみよう!
「マンションAI®」に相談してみよう!
現在、全建センターの「マンションAI®」は数多くのマンションの理事、あるいは組合員からご質問が寄せられ、それに対してマンションAIが回答している、という実例があります。
このコーナーでは、実際にこの数カ月の間に管理組合の皆さんが「マンションAI®」を活用されている実例を紹介します。
【監修】全建センター筆頭理事・佐藤成幸
Q
窓サッシの全戸一斉更新でのアドバイスをください
A
窓サッシの全戸一斉更新に関するアドバイスを以下にまとめます。
1. 住民の意見を事前に収集する
書籍の記述にあるように、住民アンケートを実施して要望を把握することが重要です。これにより、住民のニーズに合った改修内容を計画できます。
2. 優先順位を明確にする
資金面や工事の緊急性を考慮し、他の修繕工事との優先順位を明確にします。例えば、書籍では大規模修繕工事を2年後回しにしてサッシ改修を優先させた事例が紹介されています。
3. 適切な工法を選択する
書籍に記載されている「カバー工法」は、既存の窓枠の上に新しい枠を被せる方法で、工期短縮やコスト削減が期待できます。この工法を検討するのも良いでしょう。
4. 断熱性能の向上を目指す
窓ガラスには「Low-Eペアガラス(高断熱複層ガラス)」を採用することで、断熱性や遮熱性を向上させ、省エネ効果を得ることができます。これにより、住民の光熱費削減や快適性向上につながります。
5. エアコンスリーブの設置を検討する
書籍では、エアコンスリーブの新設が課題となっていました。スリーブを設けることで、エアコン配管の取り回しが容易になり、住民の利便性が向上します。ただし、鉄筋を切断しないよう慎重に位置を調査し、適切な工法を採用する必要があります。
6. 防犯性の向上を図る
FAQに記載されているように、防犯フィルムや窓のロック機能を強化することで、住民の安全性を高めることができます。
7. 補助金制度を活用する
書籍に記載されている補助金制度(断熱リフォーム事業費補助金など)を活用することで、費用負担を軽減できます。補助金の申請手続きについては、専門業者や管理組合が対応することを推奨します。
8. 資産価値の向上を目指す
書籍の事例では、改修後に中古販売価格が上がり、資産価値が向上したという声がありました。住民に対して、改修のメリットを具体的に説明することで、賛同を得やすくなります。
9. 施工業者の選定に注意する
信頼できる施工業者を選定し、工事の品質を確保することが重要です。過去の実績や口コミを参考にすると良いでしょう。
10. 住民への周知とコミュニケーションを徹底する
工事のスケジュールや内容について、住民に十分な説明を行い、理解を得ることが大切です。工事中の騒音や不便についても事前に伝えておくと良いでしょう。
これらのポイントを参考に、窓サッシの全戸一斉更新を計画・実施してください。住民の満足度を高めるために、丁寧な対応を心がけることが成功の鍵となります。
11.全建センターの相談窓口
全建センターでは「玄関ドア・サッシ改修相談室」という専用の相談窓口が設けられており、窓サッシの改修に関するアドバイスやサポートを提供しています。
また、以下のような情報も提供されています。
・窓サッシ改修の工法(例:カバー工法)や使用するガラスの種類(例:Low-Eペアガラス)についての説明
・改修による効果(結露軽減、エアコン効率向上、防音性向上など)
・補助金制度の活用方法(例:断熱リフォームに対する補助金)
さらに、全建センターではオンライン相談室も設置しており、Zoomを利用して気軽に相談が可能です。詳細や申し込みについては、全建センターの公式ウェブサイト(//zenken-center.com)をご確認ください。
「さるかに合戦」に見る、SNSの炎上

コンビニのレジ横で、おにぎりを握りしめたまま立ち尽くす「かに」を想像する。そこへ、口のうまい「さる」が寄ってきて、「それ、今食べたら終わり。でも“種”に替えれば、あとで実りが増える」と囁く。投資話・副業勧誘・ポイント経済圏のテンプレみたいな甘い未来図。
かには渋々交換し、柿の木を育て、いざ収穫の局面で“プラットフォーム強者”のさるに総取りされる。ここまで、弱者が手間を引き受け、強者が果実を回収する構図があまりに現代的だ。
で、問題は後半。『さるかに合戦』の怖さは、かにが損をしたことより、青柿という“踏み絵”を投げつけられ、命まで落とす(あるいは深手を負う)ところにある。そして子が復讐する。栗・蜂・臼・牛糞といった助っ人が集まり、役割分担し、相手の家に「仕掛け」を施す。スカッとするのに、背筋も冷える。正義の連帯が、いつでも私刑の連帯に反転しうるからだ。
これ、SNSの炎上とそっくりだ。被害の切り抜きが流れ、通報ボタンより速く、引用と断罪が回り始める。加害者は一瞬で「物語の悪役」に固定され、関係ない人まで参戦する。正義の大合唱は気持ちがいい。だが熱量が上がるほど、事実確認より“筋書きの整合性”が優先される。柿の実を誰が育てたかではなく、「いま、誰を懲らしめるか」が中心になる。 だから近年、この話は“丸く”される。
私たちは暴力を見たくないし、子どもに見せたくもない。そこはよく分かる。 ただ、現実のトラブル処理で「物語の後半」だけをコピペすると、だいたい失敗する。報復が先に立つと、次は相手が被害者を名乗り、さらに別の“連帯”が生まれる。
やり返しても、タイムラインの柿は甘くならない。甘くなるのは、怒りの味だけだ。
ここで一度、昔話法廷みたいに考えてみる。さるが罪を認め、検察が重罰を求め、弁護側が「生きて償うべきだ」と訴える——この設定は、私たちの胸の中の二つの欲望をくっきり分ける。
ひとつは「落とし前」。もうひとつは「再発防止」と「回復」。どちらも正しいのに、順番を間違えると、正しさが凶器になる。
現代の教訓を一つだけ引き取るなら、「種を渡す前に、ルールと出口を決めろ」だ。交換(契約)には説明責任が要るし、収益配分には透明性が要る。
困ったときの第三者(相談窓口、仲裁、記録、証拠)があれば、栗も蜂も牛糞も、そもそも集結しない。連帯は、報復のためだけじゃなく、生活を取り戻すためにも使える——柿の木の下で育てたいのは、敵を倒す武勇伝より、「次はだまされない」制度のほうだ。
(ジャーナリスト 井上勝彦)
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