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Q84 3回目の大規模修繕、注意事項は?

Q84 3回目の大規模修繕、注意事項は?

 築35年のマンションです。理事会で3回目の大規模修繕工事の準備をしなければならないという話が持ち上がりました。
そこで、3回目ではどのような工事をするのが一般的か、また、どのようなことに注意すればよいかを教えてください。

ベストアンサーに選ばれた回答

基本工事のほか、グレードアップも対象
入室拒否対策、古い管理規約にも注意を
 3回目の大規模修繕工事では、外壁を主体とした基本工事のほか、玄関扉、窓サッシの更新、エントランス回りの改修、バリアフリー改修、耐震改修などのグレードアップが工事対象に含まれるようになります。水回り設備関係では、経年劣化により共用部分だけでなく専有部分の給排水管の更新等も必要になります。
 また、エレベーターの更新、電気容量やテレビ共聴設備の改善、外構工事もこの時期の実施する管理組合も多く、特に機械式駐車場の更新は様々な検討を必要とし、費用も高額となりま
 さらに経年により、居住者側の年齢も上がっていることもあり、日常生活への配慮や資金計画が重要になってきます。連絡が取れない住戸、入室を拒否する住戸等への対応も注意事項に入ってくるでしょう。
 工事実施の総会手続きに関しては、一般的には普通決議で行うことができますが、共用部分の変更(形状・効用を著しく変えるもの)を伴うようなグレードアップ等を含む場合、古い規約のままであったり、専有部分の工事を管理組合が主導するなど管理規約の改定がある場合は、特別決議を要することもあります。
【空き室、入室拒否への対策】
 大規模修繕工事で入室が必要な工事項目がある場合、居住実態の有無のほか、区分所有者の連絡先等を調べておかなければならない。区分所有者の連絡先が判明しない際には訴訟を起こし、本人の承諾に代わる判決をもらうか、その部分の工事を行わないことにするかの方法を選択するほかない。排水管改修など立て系列の住戸全部を改修しないとかえって漏水事故が起きやすくなるような場合は、専有部分の使用または立ち入りを認める判決をもらったうえで工事するほかないといえる。
 入室を拒否する住戸に対しても、同意が得られなければやはり承諾に代わる判決を得たうえで入室し、工事をしなければならない。※専有部分内の排水管工事の必要性等から工事の協力義務、工事妨害禁止を認めた判決例(平成3年11月29日東京地裁)、漏水事故につき階下住民が修理のために立ち入りを求めたが上階住民がこれを拒否したことが修理妨害に当たるとして損害賠償責任を認めた判決例(昭和54年9月28日大阪地裁)。
【普通決議か特別決議かの判断例】
・ 普通決議→バリアフリー化にあたり、階段や廊下に手すりを設置したり、敷地から玄関へのアプローチの歓談部分の一部をスロープに変える。一般的に建物の基本的構造部分を取り壊すなどの加工を伴うものではない工事は、形状または効用
の著しい変更に当たらず、普通決議で工事実施ができる。
・場合、工事内容によって決議要件が分かれるが、既存のパイプスペースを利用し、外壁や耐力壁等に工事を加えるものの形状に著しい変更を生じさせる工事でない場合は普通決議で行うことができる。
・ 特別決議→エレベーターを新たに設置する。これは階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けする方法になるので、特別決議が必要となる。
・ 特別決議→ピロティの一部に仕切りを設置して囲い、談話室にする。この場合は用途変更を伴うことから特別決議が必要と考えるべきである。
【管理規約の効力】
 マンションの管理規約が区分所有法の改正に追いつかず、現在も「共用部分等の変更(改良を目的とし、かつ著しく多額の費用を要しないものを除く)」は特別決議で決すると定めている場合、特別決議が必要なのではないかという問題がある。
 ただ、区分所有法改正の意思解釈からいって、このような規約・規定の効力がそのまま維持されることには無理があり、法改正の趣旨を無視することになるため、一般的には普通決議で大規模修繕工事を実施することができると考えられる。
 とはいえ、多額の費用を要する大規模修繕工事が普通決議で行うことができる状況になった以上、それができない状況で特別決議を要すると定めた管理規約は見直しを図っておくべきである。
   < 参考:齊藤広子・篠原みち子・鎌野邦樹著『新マンション管理の実務と法律』、横浜市建築局発行『マンション管理・再生の手引き』>

大規模修繕工事新聞(134号)


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