コンプライアンスとインテグリティ
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』』2021年3月5日付第462号「論談」より
◆コロナ禍への対応
管理組合の総会や理事会などの会議をインターネットの活用によるオンラインで行う方式がマンション管理業協会など各方面で検討され、業界紙等でも取り上げられている。
この問題を、リアル会議(これまで行われてきた普通の会議)と対比しながら、管理組合の現場の状況、法的側面、技術的側面などから考えてみたい。
◆法的には許容範囲
まず法的な面はどうか。
区分所有法は電子投票を規定し、全員の賛成票があれば決議できる。また普通決議については電子投票によることを事前に全員が了承していれば過半数の賛成で決議できる規定を持つ。
これに対してオンライン総会は、双方向であるから討論が可能で、一方通行の電子投票とはまったく異なる。
したがって、一カ所に集まって行う総会に準じたものとみなしてよいと思われる。法的にみると現行法の範囲に収まるとする解釈でよいと考える。
◆難点をどうクリア
しかし、法的な点と技術的な点をあわせて考えると難点がないわけではない。
それは会議に修正案が出されたときの対応がスムーズにできるかという点や、多数が参加した会議での採決が円滑に行えるかなどの点である。少数意見を尊重し、討論を行い、できるだけ多数の意見を一致させるというのが民主主義のあり方である以上、本当の意味での双方向の意思疎通が保障されるように難点の克服の方法が検討される必要がある。
◆IT弱者への配慮
またIT機器を持たない人や操作の困難な人への対策が必須である。この点では、リアル会議を求める組合員が一人でもいれば必ず会場を設けて参加を保障することとか、機器の貸与や操作の支援を考えるなど、万全の対応が求められる。
こう考えてくると、理事会は別として総会の場合、オンライン会議だけで可能なのは2~30人が限度で、一般的にはオンライン会議とリアル会議との併用になるのが現実的だと思われる。いずれにしても各々の管理組合が自らの現状を検討しながら、自立的に結論を出すべき問題である。
(NPO日住協論説委員会)
(大規模修繕工事新聞 136号)