問題を直視しない「不作為」
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』』2021年8月5日付第467号「論談」より
◆逗子の崩落事故
2020年2 月5 日、神奈川県逗子市のマンションの敷地斜面が崩落し、女子高生が土砂に巻き込まれて死亡した事故から
1年が経ち、遺族がマンションの区分所有者と管理組合、管理業務を受託していた管理会社を相手に、安全対策を怠って事故が起き約1億1,800万円の損害が生じたとして損害賠償などを求めた訴訟の第1回口頭弁論で、原告側は、斜面は瑕疵があり安全性を欠いていた、過失がなくても土地の区分所有者が賠償責任を負う土地工作物に当たると訴えた。
◆免震ゴム性能偽装
2015年に発覚した東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)の免震ゴム性能偽装に絡み、国の基準未満のゴムが使われていたとみられる福岡市の30階建てタワーマンションが解体する。
免震ゴムの性能偽装の対象は、全国で154棟のマンションを含む建物で、免震ゴムの交換が進められていた。
◆杭の支持地盤未達
福岡市の「ベルヴィ香椎」は8棟の団地。建物の傾斜が判明した「六番館」は、1995年竣工の7階建て60戸。JR九州などの販売元は瑕疵をやっと認め、建替え工事が開始された。
竣工後まもなく、建物に多数のひび割れが発生。建物の傾斜も判明。建物を支える基礎杭が支持地盤に届いてなかった。
玄関ドアの開閉もひび割れが大きく光が差し込むなどの支障もあった。長い交渉の末の建替えである。
杭が支持地盤に届いていない問題は横浜だけでなく、この例のように過去にもあった。
◆管理組合は「不作為」に気をつけよう
前述の事例に共通するのは関係者の「不作為」である。
逗子の管理組合は所有地等の事前の把握について。東洋ゴムは品質に関して。福岡の杭問題はなかなか認めなかった販売側の対応について。
それぞれが、事前確認や事後点検などに消極的あるいは積極的ではない、つまり「不作為」である。
管理組合は課題や問題に直視し、不作為を避けたい。
1年限りの理事との理由で、先送りや管理会社任せの理事会運営は管理組合を弱体化させる。逗子の例も教訓とし、土地・マンション内外を確認しておきたい。
(NPO日住協論説委員会)
(大規模修繕工事新聞 140号)