「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

第82回管理組合オンライン・セミナー採録 『談合問題解決は、まず長期修繕計画の見直しから』

動画を設定してください。

 一般社団法人全国建物調査診断センターが8月30日に配信開始した第82回管理組合オンライン・セミナーの抜粋・採録です。今回は、『談合問題解決は、まず長期修繕計画の見直しから』をテーマに、一般社団法人全国建物調査診断センター所属・瀬川香里氏(アバター理事)による講演の様子を紹介します。


本日のテーマは、「談合問題解決は、まず長期修繕計画の見直しから」。そしてAIロボット活用と、マンション管理士が監修した新しい長期修繕計画見直しサービス、新しい建物診断書の考え方、資金計画の見直しと住民合意形成の進め方まで、分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

近年、マンションの大規模修繕工事をめぐっては、管理会社や設計・監理事務所、工事会社による談合問題に端を発する、工事業界の発注の透明性や工事費の妥当性に対する関心が、日に日に高まっています。
その中で、私たち全国建物調査診断センターが本日お伝えしたいのは、問題の本質の一つは、工事の実施段階だけにあるのではなく、その前段階である長期修繕計画の立て方、見直し方、そして管理組合の意思決定の組み立て方にもあるという点です。
本日のセミナーでは、AIロボット活用と、マンション管理士が監修した新しい長期修繕計画見直しサービス、新しい建物診断書の考え方、資金計画の見直し、そして住民の合意形成の進め方について、わかりやすくお伝えしていきたいと思います。

本日のテーマは、大きく分けて6つです。
1.なぜ今長期修繕計画の見直しが必要なのか
2.なぜ大規模修繕工事の談合問題と長期修繕計画の見直しがつながるのか
3.全国建物調査診断センターがサービスを開始する、AIロボット活用、マンション管理士監修、新しい建物診断書を組み合わせた見直しサービスの特徴
4.モデルケースによる具体的な費用差と資金計画
5.住民の皆様とどう合意形成を進めていくか
6.管理組合が今日から何を始めるべきか

 

 

講師:瀬川香里氏 一般社団法人全国建物調査診断センター所属/アバター理事

1.なぜ今、長期修繕計画の見直しが必要なのか
最初に、なぜ今このテーマが重要なのかを再確認しておきたいと思います。
皆様のお手元にある長期修繕計画は、あくまでも作成時点での前提条件に基づくものです。マンションの劣化の進み方、各種設備の使用状況、居住者構成、さらに近年の物価上昇や工事費高騰などを考えると、作成時点の計画のまま、将来まで通用するとは限りません。
つまり、長期修繕計画は一度作って終わり、の計画ではなく、建物の現状に合わせて常に見直し続ける計画だということです。
今回我々がAIロボットを活用して作成したサービスでは、見直しが必要な理由として、蓄年数の経過とともに当初の想定と現実とに確実にズレが生じること、足場共有や前倒し工事実施の判断によって、全体のトータルコストを抑えられること等が示されています。
モデルケースでは、現在の修繕積立金が月額1万2,000円のまま維持された場合、30年後に約9,300万円の不足が見込まれるとされています。
この不足はある日突然起きるわけではありません。見直しを先送りしている間に静かに積み上がっていくものです。
だからこそ、問題が表面化する前に動き出す必要があるのです。

2.なぜ大規模修繕工事の談合問題と長期修繕計画の見直しがつながるのか
談合というと、入札や見積もりの場面を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし実際にはそのもっと前、つまり何を、いつ、どの規模で、なぜ実施するのかが曖昧なまま進むことが不透明な発注につながってしまうことが、談合の土台になっていると言えます。
管理組合側に十分な判断材料がない、建物診断の内容が難しくて整理しきれない、工事の必要性や優先順位が見えにくい、住民説明の材料も足りない。
このような状況では、どうしても受け身の意思決定になってしまいます。
長期修繕計画を見直すことで、管理組合は、なぜこの工事が必要なのか、なぜこの時期なのか、他の選択肢はないのかを自分たちの言葉で説明できるようになります。
ここに、長期修繕計画見直しと談合対策がつながる本質があります。

3.全国建物調査診断センターがサービスを開始する、AIロボット活用、マンション管理士監修、新しい建物診断書を組み合わせた見直しサービスの特徴
  本サービスの特徴は、中立的立場で、マンション管理士監修、AI分析、新しい建物診断書を組み合わせている点にあります。
まず中立性です。管理会社や施工会社の立場ではなく、第三者として計画を見直すことで、管理組合として住民に説明しやすい土台を作ります。
次に、AIによる分析だけでなく、管理組合運営実務・法務、管理組合の合意形成の観点を含めて、経験豊富なマンション管理士(国家資格)が実行可能な計画へと整えます。
さらに、AIは、最終判断を行う存在ではなく、過去データや工事項目の関連性、時期調整の可能性などを整理し、比較しやすい形で見える化する補助者サポーターとして機能します。
そして、新しい建物診断書です。これまでの経緯を踏まえ、建物の現況を丁寧に把握し、その実態に合った見直しを行うことで、機場だけでない現実的な長期修繕計画につなげます。進め方は、4つの段階(調査診断計画、見直し、資金計画調整、合意形成)で整理されています。

 

 

4.モデルケースによる具体的な費用差と資金計画
 ここからは具体的な数字を見ていきます。
モデルケースとして示されているのは、東京都にある、RC造・15階建て・50戸・築15年のマンションです。
こちらを今回のサービス検証で行った結果をお示しします。
このケースで修繕積立金が月額1万2,000円のまま据え置かれた場合、30年後に約9,300万円の不足が見込まれるとされています。
一方、工事内容の見直し時期の最適化、工事項目の統合などを行うことで、30年間の累計修繕支出は見直し前の約4.19億円から、見直し後の約3.98億円、圧縮され、約2,100万円の削減余地があると示されています。
この削減は単なるコストカットではありません。
工事そのものをやめるのではなく、足場の共有関連工事の同時実施、劣化状況に応じた前倒しや後ろ倒しなど前提最適の視点で組み直した結果です。
つまり修繕費は何をやるかだけではなく、どのように組み立てるかで大きく変わります。ここに我々がサービスを開始する長期修繕計画見直しの大きな価値があります。
例えば、屋上防水は単体で見ると金額が増えるように見えることがあります。
しかし、他の工事と同時に行うことで、足場費や工程全体の効率化につながることがあります。
シーリング工事も同様です。早めに手を打つことで漏水や外壁劣化の二次被害を防ぎ、結果的に将来の大きな補修費を抑えられる場合があります。
また、大規模修繕工事そのものもただ先送りすれば良いわけではありません。建物の状態によっては少し前倒しする方が全体として合理的なこともあります。
つまり見直しとは工事を減らすことではなく、建物の実態に合わせて計画全体を再配置することです。こうしたことを含め、修繕積立金の見直し、修繕積立金の値上げは、多くの管理組合で最も難しいテーマとなっています。

ただし、修繕積立金をどうしても値上げしなければダメか、あるいは、値上げをしないかの二択になりがちですが、本当に大切なのは、どのような値上げの理由なら、住民の納得を得ながら将来不足を避けられるかという視点です。
今回示されている考え方では主に3つの方向があります。一つ目は現状維持です。月額1万2,000円のままで進める案ですがこの場合は30年後に約9,300万円の不足が見込まれます。2つ目は一気に引き上げる案です。
早い段階で18,000円へ改定することで、資金不足を回避しやすくなります。3つ目は段階的な改定です。
今回の提案では、6年後に15,000円、16年後に18,000円という2段階の増額案が示されています。
この段階的改定の利点は、急激な負担感を抑えながら必要な資金を計画的に確保できる点です。
また、比較資料として2018年度の平均修繕積立金額が15,257円であることも示されており、18,000円という水準が極端に高すぎるものではないことも読み取れます。
積立金の見直しは、単なる値上げの話ではありません。
将来、一時金徴収や借り入れとなることを避けるために、今どう備えるかという問題です。

5.住民の皆様とどう合意形成を進めていくか
長期修繕計画の見直しで最後に必ずぶつかる問題が合意形成です。
どれほど合理的な計画でも、区分所有者の皆様に伝わらなければ実行できません。理事会で納得していても、総会で理解が得られなければ前に進みません。
今回の案内では、いきなり総会で決議するのではなく、まず方向性を共有し、その後調査説明会、質疑応答を重ね、改めて決議へ進む流れが示されています。
住民が理解し、必要性を感じ、納得して動ける状態になることまで含めて初めて実行可能な計画になります。

6.管理組合が今日から何を始めるべきか
それでは最後に本日の内容をまとめます。第1に、長期修繕計画は一度作って終わりではないということです。
建物の現状と社会環境の変化に応じて、定期的に見直し続ける必要があります。第2に、現状維持は安全策ではないということです。
モデルケースでは、月1万2,000円のままでは30年後に約9,300万円の不足が見込まれることになりました。
第3に、見直しとは単なる値上げではなく、修繕計画の再構築だということです。工事の時期、範囲、組み合わせを見直すことで、30年累計で約2,100万円の削減予知が見えてきます。

第4に、AIは人に代わって決めるものではなく、人の判断を助ける道具だということです。
第5に、最後の鍵は合意形成です。
住民が理解し、納得して前に進めることが実行可能な計画の条件です。長期修繕計画の見直しは単なる数字の調整ではありません。
談合問題に端を発し、何が重要なポイントなのかがわからなくなってきています。また、何を信じたらよいのか、誰を信用したらよいのか、当セミナーを拝聴されている、問題意識の高い管理組合の方は特にそうだと思われます。
AIから取得した客観的なデータを信頼できる国家資格者であるマンション管理士が監修を行う。現段階では一番の最適な方法であると断言いたします。
本日のテーマに関してさらに詳しく知りたい方、長期修繕計画の見直しをご検討中の管理組合様は案内ページ及びサービス詳細ページをご参照ください。
ご清聴、誠にありがとうございました。

 

 

大規模修繕工事新聞 2026年10月 202号


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA