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管理組合役員勉強会・紙上採録

69-28

7月26日、東京・京橋の㈱住宅あんしん保証本社会議室で全国建物調査診断センターと建物修繕技術協会が主催し、毎回好評を博している管理組合役員勉強会を行いました。この勉強会はすでに21回目。参加者は600人を超えました。さらに8月23日には大阪で関西地域初のセミナーを開始しました。
今回は、㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)佐藤成幸専務取締役が講師を務めた「大規模修繕工事の成功のカギは長期修繕計画にあり!」の一部を掲載します。

使える長期修繕計画作成のためには

69-29①そのマンションに合ったものにする
建築の構造や外装、防水の仕上げもさまざまであり、また設備の材料も異なるため、画一的または規格的な長期修繕計画をベースにし続けることは現実のマンションとは乖離(かいり)した矛盾を生じることになる。
②既存の見直しや作り直しの場合は現状の劣化状態を把握する
立地や使用状況、メンテナンスの内容によって机上と実際の耐用年数は異なる。
したがって現状の劣化状況を詳細に把握しなければ、適正な修繕時期の判断を見誤る可能性がある。
また工事費用も実際にマンションで発生したものがあれば、その金額を参考にする。
③理事会メンバーだけではなく区分所有者全員の共有認識が必要
作成や見直しした場合、当代理事会だけしか内容を把握していなかった、とう事態がないようにしなければならない。
実際の積立金改定や大規模修繕工事実施は、後任理事会になる可能性が高いが、その際の理事会メンバーが長期修繕計画の内容を知らないということがとても多く、好機を逸した取り組みになっている場合がある。
④工事費の積算は仕様の想定と明細の積み上げ方式にて作成する
戸当たり〇円のどんぶり勘定では高額の工事費用に関しての区分所有者への納得のいく説明が困難である。
根拠のある工事費には仕様材料の想定と明細書による積み上げ算が必要である。
また工事種類によっては仮設関係工事が欠かせないものもある。こうしたものも長期修繕計画に計上しなければ実際の工事の際に不足が生じる。
⑤ 特に1回目の見直し作業では「大規模修繕工事」を具体的に想定した計画を盛り込む
まず、クリアしなければならない1回目の大規模修繕工事に関して、仮設や入居者協力事項等も視野に入れた計画を立案して、それを基にした公費費用を計上する。
最初の見直しは5〜7年目に実施されることが多く、この時点で具体的な計画を考慮した長期修繕計画を立案すると、積立金値上げに対しても説得力が出る。また来る工事に関しても概要大枠方針が出ているために入念な準備ができる。
⑥ 工事費の「支出」にばかり注目するのではなく積立金「収入」にも注目する
工事費が高いとか、削減することに注力しがちになるが、しっかりとした具体的な計画の基に積み上げ算の工事費用では意味をなさない。むしろ収入に留意することが必要。
不足分は積立金値上げや一時金徴収ばかりに議論が集中するが、マンションによっては借入金により賄うという方法も現実的な場合がある。先入観を取ることも、時には有効である。
⑦マンションの長期修繕計画は永遠に未完成
一度作成して大規模修繕工事が完了すると、役目が終わった感が出る長期修繕計画だが、工事のサイクルは建物が存在する限り発生する。収益物件ではない分譲マンションでは存在する
限り計画修繕は永遠に続く。
だからこその見直しであり、修正が常に必要であり、まさに「長く付き合う工事計画」である。
見直しは、積立金残高の修正である小規模見直し、計画修繕実施した際の工事項目の見直し、3回目以降の大規模修繕工事の実施が入る年代になれば、その計画を立案する大規模な見直しがある。
(大規模修繕工事新聞 第69号)


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