●構造計算書偽装問題がきっかけ
新築住宅の売主等は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法、平成12年施行)に基づき、住宅の主要構造部分の瑕疵について、10年間の瑕疵担保責任を負うこととされています。
しかし、平成17年、姉歯秀次・元一級建築士による構造計算書の偽造が発覚したことに端を発する構造計算書偽装問題を契機に、住宅購入者等の利益の保護を図るため、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)が平成21年に成立・公布されました。
これにより、住宅に瑕疵があった場合の対処として、住宅瑕疵担保責任保険法人が指定され、①資力確保措置(建設業者による保証金の供託・保険契約)、②保険の引受主体の整備、③住宅紛争処理体制の整備が行われまし
た。これが住宅瑕疵保険誕生の背景です。
●新築は義務化、中古は任意
平成22年、大規模修繕工事瑕疵保険がスタートしました。
ところが、住宅瑕疵担保責任保険への加入について、新築住宅は義務化、中古住宅(改修工事)は任意という規定がされています。
また、保険加入者(契約者)は、前述した「①資力確保措置(建設業者による保証金の供託・保険契約)」のとおり、建設業者です。
大規模修繕工事瑕疵保険についても、保険契約は発注者の管理組合ではなく、工事請負会社の建設業者となります。
工事を受注した建設業者にしてみれば、保険加入は任意であり、工事物件ごとに発生する保険料はそれぞれの管理組合に要求したい、さらに管理組合は工事金額を抑えたいということから、大規模修繕工事瑕疵保の普及は
難しい状況となっています。
新築では保険料の算出を計画に組み込めるものの、中古(改修)ではだれが保険料を支払うのかが不透明で、結果的に建設業者か、管理組合か、だれのための保険なのかが混乱を招く原因となっているといえます。
しかし、実際に大規模修繕工事においても施工瑕疵で建設業者と管理組合が揉めるケースは多々あります。
今後、大規模修繕工事を計画している管理組合では、今一度、瑕疵保険の内容整理・理解を試みてはいかがでしょうか。