電気幹線改修非協力をきっかけに
59条競売請求が認められる
2010・11・29 横浜地裁
本件は区分所有者(被告A)が区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」をしたとして、団地管理組合の棟別総会決議において、法59条1項に基づき競売請求と損害賠償を求めた事案。控訴審で被告Aが①高圧一括受電方式の導入に同意②任意に部屋を売却して出て行く③和解金50万円を支払う等を理由に4月15日、和解が確定した。
区分所有権等競売等請求事件
【事件の要点】
・建物は5階建て4棟からなる団地型マンション(全125戸)
・ 平成21年5月定期総会で、電気幹線改修工事を特別決議(4分の3以上)で可決した。
電気幹線改修工事
高圧一括充電方式による電気供給システムへの変更。
高圧一括充電方式は、高圧受電設備を設置して一括受電し、そこから各戸に電気を供給する。
高圧受電のためのキュービクル・各戸にトランスの設置、各戸の室内分電盤までの配線工事が必要。東京電力との戸別契約を改め、高圧受電設備を設置する会社Bとの戸別契約に変更することになる。
・ 総会終了後、被告Aが会社Bとの戸別契約を拒否したため、高圧一括充電方式による電気供給契約ができず、工事を進めることができなくなった
・ 平成21年10月臨時総会。既存の幹線ケーブルを使用して東電から電気供給を受けつつ、各戸への配線工事のみ行うことを決議。同11月に完成
・ 臨時総会では、被告建物につき区分所有法59条に基づく競売および被告に対する損害賠償請求を提訴することを4分の3の多数で決議
【従前の経緯】
・ 平成14年6月、管理組合はケーブルテレビ導入に伴い、全戸のテレビ端子交換を行ったが、被告Aは協力を拒否した
・ 平成18年に行われた雑排水管改修・浴室防水工事に反対し、工事業者が室内に立ち入ることを拒否。このため同系統5戸の工事ができなかったことから、管理組合は被告Aに対し損害賠償請求を提起した。平成19年1月和解
・ 平成21年に行われた各戸玄関扉の内外塗装、サッシ回りのシーリング工事について、被告Aはこれを拒否した
【地裁の判断】
・ 被告Aが会社Bとの契約を拒んでいることは工事が止まっている唯一最大の理由である
・ 被告Aが契約を拒否している理由は正当性があるものと認められない
・ 被告Aは他の住民と協力して住環境の保全と向上を図ることには目を向けないという姿勢が顕著である
・ 被告の対応により本件工事を進められないことは区分所有法
6条「共同の利益に反する行為」に当たると解される
・「 他の方法によってその障害を除去することが困難」な場合に該当する
・ 被告Aの不法行為による電気工事の追加費用109万2,000円、電気工事によって低減される電気料金1万7,514円、その他被告Aの行為と因果関係にある弁護士費用40万円が管理組合の損害となる
・ 原告は被告A所有物件の区分所有権および敷地権、建物の共有持分について競売を申し立てることができる
【コメント】
ライフラインに大きな影響を与えない工事についての59条競売の適用であり、控訴審となれば判決が覆る可能性も考えられたが、和解による解決となって何よりだった。
管理組合の運営に協力しないことは共同の利益に反する行為である。その行為が高じれば所有権を剥奪するという結果もありだということを示した判決例である。
(大規模修繕工事新聞 第18号)